紀要1号 原著1
 

中学生の対処行動に関する研究
-悩みや困ったことのある場合-

天野洋子 1)・上田礼子 1)・桜井あや子 2)・安里葉子1 )
 

 本研究の目的は、中学生の悩み、ストレスについてとその対処行動について明らかにし、潜在的な問題をもつ生徒に対する支援の手がかりとすることである。
東京都内の国立大学附属の中学2年生120名を対象に1998年2回の質問紙による調査を行った。主な内容は現在の健康状態、自己概念、悩みやいらいらするときの対処方法、SCI 調査項目、他である。その結果、中学生の悩みや困った時の対処行動として最も多かったのは、社会的支援模索型 (30.1%) であり 次に逃避型3 (音楽を聴くなど)、逃避型2 (寝るなど) であった。性別では女子に社会的支援模索型が多かった。健康状態良好群には、社会的支援模索型が多く、自己コントロール型は少ない傾向にあった。対処行動において、自己コントロール型のものは、問題が潜在化しやすいことが考えられ、留意する必要があると示唆された。
キーワード:中学生、悩み、ストレス、対処行動、社会的支援

 
 

I 緒言

  学校における養護教諭の行う健康相談において生徒が身体症状を訴える場合にその背後に心理的問題が潜んでいることがある。その問題の解決を図ることで症状が寛解することも多い 1)。問題を抱えている子どもほど対処の方法が分からない、あるいは周囲にも表現することなく、対処できなくなって身体症状や行動で表出することがあるとも考えられる。このような生徒の問題に対処する方法に関して、伊藤は、悩みと健康状態、対処行動、悩みの相談と生活環境に関する報告をしている。2) 3) 4)その中で男女共健康的で相談者がいる場合には、積極的対処行動を多くとり、不健康的で相談者無し群の場合、逃避的な対処行動を多くとると述べている。
しかし、潜在的問題をもつ生徒に対して、どのようにアプローチをしたらよいのかについての研究は少ない。
本研究は、中学生が悩みやストレスがある場合どのような対処行動をとっているかを明らかにし、健康状態との関連からそれらを検討し、潜在的な問題をもつ生徒に対する支援の手がかりとすることを目的としている。

 

1) 沖縄県立看護大学
2) 東京医科歯科大学医学部附属病院

 
 

II 研究方法

 東京都内の国立大学附属中学校の2年生120名 (男子60名、女子60名) を対象として、1998年5月と7月に調査を実施した。調査は質問紙により2回、養護教諭による保健体育科保健の時間に実施した。1回目の質問内容、生徒の属性、現在の目標・関心ごと、現在の健康状態、自己概念、自覚的健康度 [CMI (CornelMedical Index) 健康調査27項目]、悩みやいらいらする時の対処方法 (自由記述式)、心配ごと、相談ごと (自由記述式) から構成されている。2回目の質問内容は、第1回目に行った3項目- (生徒の属性、現在の健康状態、自己概念) に新たにSCI (Stress CopingInventory 以下 SCI と訳す) 調査項目 5) (インベントリー方式) を入れて構成されている。SCI 調査は、ストレスに対してどのような反応・対処の傾向があるかをとらえるために開発されたものであり、「強い緊張を感じた状況」を記入し、その時に自分のとった対処の仕方を64項目について 「あてはまる」 「少しあてはまる」 「あてはまらない」 の3選択肢の中から選び、回答する方法である。64項目の質問は“計画型”、“対決型”、“社会的支援模索型”、“責任受容型”、“自己コントロール型”、“逃避型”、“隔離型”、“肯定評価型”の8つのカテゴリーに分類される。各カテゴリーにあてはまる質問 (8項目) に対して、「あてはまる」 と回答した場合2点、「少しあてはまる」 1点、「あてはまらない」 0点を加算して各カテゴリーの得点を算出する。また、得点は各カテゴリーごとに5段階に分けられる。(すなわち“計画型”0~2点は1段階、3~5点は2段階、6~9点は3段階、10~12点は4段階、13~16点は5段階とする。) それぞれの特性傾向は、5段階: 「非常に強い」、4段階: 「かなり強い」、3段階: 「普通程度」、2段階: 「比較的少ない」、1段階:「ほとんどない」 と診断される。 SCI は大学生710名 (18~23才)、一般成人270名 (25~70才)、看護婦150名に対して調査を行い、有効性と妥当性が確認されている。今回は SCI が中学生に使用できるか否かを試みるために、まず1回目の自由記述方式で得られた回答を SCI の分類に基づいて分類した結果、回答の大部分は SCI の質問項目に該当していた。従って中学生は、 SCI の質問項目に対して選択方式で回答する事が可能と考え、2回目の調査において SCI 調査項目を用いた。
今回は第1回目の質問内容生徒の属性、現在の健康状態、悩みやいらいらする時の対処方法について、第2回目の生徒の属性、現在の健康状態、 SCI 調査項目を中心に検討した。分析の方法は、1) 1回目の悩みやいらいらするときの対処方法に関しては、 ABC 分析 (ある状況の各項目頻度を ABC の3つのランクに分け頻度の高い項目を見極める分析法)、 2) 2回目 SCI 項目分析は、マニュアルに従って得点化して特性傾向を検討し、健康状態との関連を検討した。 3) 自由記述式とインベントリー方式によるそれぞれの悩みの把握の特徴を検討した。

 
 

III 結果

 回答に記入不備のあったものを除いて120名中93名を有効回答として分析を行った。(有効回答率77.5%)

  1. 対象者の属性、性別:男子44人 (47.3%) 女子49人 (52.9%)、出生順位:全体で第1子45%、第2子39%、第3子11%である。同胞の数:全体では2人が54%、3人が20%、1人が15%、4人10%であった。父親の年齢:平均47歳、母親の年齢:平均43歳であった。
      家族構成:核家族87%、拡大家族13%であった (表1参照)。
    表1 対象者の属性
    属性

    全体
    人(%)

    男子
    人(%)

    女子
    人(%)

    性別

    男子

    44(47.3)

     

    女子

    49(52.7)

     

    出生順位

    第1子

    42(45.2)

    19(43.2)

    23(46.9)

    第2子

    36(38.7)

    19(43.2)

    17(34.7)

    第3子

    10(10.8)

    4(9.1)

    6(12.2)

    第4子

    5(5.4)

    2(4.5)

    3(6.1)

    兄弟の数

    1人

    14(15.1)

    7(15.9)

    7(14.3)

    2人

    50(53.8)

    24(54.5)

    26(53.1)

    3人

    19(20.4)

    7(15.9)

    12(24.5)

    4人

    9( 9.7)

    5(11.4)

    4( 8.2)

    5人

    1( 1.1)

    1( 2.3)

    0( 0.0)

    父親の
    年令

    平均

    47.2

    47.4

    47.0

    33-59

    37-59

    33-57

    母親の
    年齢

    平均

    43.4

    43.0

    43.9

    34-54

    34-53

    35-54

    家族構成

    核家族

    81(87.1)

    38(86.4)

    43(87.8)

    拡大家族

    12(12.9)

    6(13.6)

    6(12.2)


  2. 健康状態 、第1回目の調査 (5月) では、とても良い29%、やや良い16%、ふつう38%、やや悪い11%、悪い5.4%であった。2回目 (7月) ではとても良い18%、やや良い16%、ふつう29%、やや悪い26%、悪い5.4%となっている (表2参照)。
    表2 健康状態

    人 (%)

       

    とても
    良い

    少し
    良い

    ふつう

    やや
    悪い

    悪い

    不明

    合計

    1回目調査 全体
    93人

    27(29.0)

    15(16.1)

    35(37.6)

    10(10.8)

    5(5.4)

    1(1.1)

    93(100.0)

    記入なし群
    16人

    4(25.0)

    1( 6.3)

    9(56.3)

    1( 6.3)

    0(0.0)

    1(6.3)

    16(100.0)

    記入あり群
    77人

    23(29.9)

    14(18.2)

    26(33.8)

    9(11.7)

    5(6.5)

    0(0.0)

    77(100.0)

    2回目調査 全体 93人

    17(18.3)

    15(16.1)

    27(29.0)

    24(25.8)

    5(5.4)

    5(5.4)

    93(100.0)

    記入なし群
    16人

    3(18.8)

    3(18.8)

    5(31.3)

    4(25.0)

    1(6.3)

    0(0.0)

    16(100.0)

    記入あり群
    77人

    14(18.2)

    12(15.6)

    22(28.6)

    20(26.0)

    4(5.2)

    5(6.5)

    77(100.0)


  3. 1回目の対処行動の内容 1回目の調査においては 「何か悩みごとやいらいらすることがあったときあなたはどのような対処や行動をしますか、よくする方法を具体的に書いてください」 と自由記述を求めた。得られた回答の記載内容をそのままパソコンにデータ入力し、 ABC 分析によって解析した。すなわち、その内容を記述された語句の中から類似した項目はまとめてその頻度を算出するという BASIC 言語を用いた解析法を行った。そして、頻度の高い順に頻度を累積していくと最後の項目で100%となり、1つの飽和曲線が得られる。この分析方法によれば、どれほどの項目で全体の何割を占めるかを一望でき、対象者全体の態度が把握できる (表3参照)。
    表3 対処行動のABC分析

    項目

    頻度a

    頻度b

    累積値c

    頻度d

    区間

    友達 (先輩) に相談する・話す

    21

    15.8

    15.8

    17.0

    A区間
    ものに八つ当たりして発散する

    10

    7.5

    23.3

    8.1

    寝る

    9

    6.8

    30.1

    7.3

    音楽を聴く

    9

    6.8

    36.8

    7.3

    自分で考える

    7

    5.3

    42.1

    5.7

    B区間

    忘れる

    5

    3.8

    45.9

    4.0

    ゲームをする

    5

    3.8

    49.6

    4.0

    騒ぐ、 わめく、 大声を出す

    4

    3.0

    52.6

    3.2

    マンガ本を読む

    4

    3.0

    55.6

    3.2

    好きなことをする

    4

    3.0

    58.6

    3.2

    人に当たる

    4

    3.0

    61.7

    3.2

    兄弟に相談する・話す・愚痴る

    4

    3.0

    64.7

    3.2

    仲の良い人 (誰か) に相談する・聞く

    4

    3.0

    67.7

    3.2

    自分の中で解決する

    3

    2.3

    69.9

    2.4

    C区間
    自分で自分を鎮める

    3

    2.3

    72.2

    2.4

    考え方を変える

    3

    2.3

    74.4

    2.4

    何とかなるさと思う

    2

    1.5

    75.9

    1.6

    運動 (部活) する

    2

    1.5

    77.4

    1.6

    泣く

    2

    1.5

    78.9

    1.6

    歌う

    2

    1.5

    80.5

    1.6

    両親に相談する・話す

    2

    1.5

    82.0

    1.6

    何も考えない

    2

    1.5

    83.5

    1.6

    (頻度1の項目)
    悩む、 八つ当たり、 とことん遊ぶ、 テレビを見る、 本を読む、 買い物をする、 お菓子を作る、 外に出て深呼吸する、 楽しいことを思い浮かべる、 祈り自分自身を明るく変えて行く、 何をするってわけでもない、 おさえる、 我慢する、 静かにして落ち着く、 自分の中にため込んでおく、 無口になる、 閉じこもる、 本人に相談する、 原因に八つ当たり、 怒る、 笑う

    *ABC分析*

    a:解答者77人中の数
    b:全頻度132に対する割合
    c:累積値
    d:対象者77人に対する割合



      表3は自由記述で得られた対処行動の内容を高いものから順に示している。最も高い頻度は 「友人 (先輩) に相談する」 であり、全体の17.0%であった。最も頻度の高い3分の1を A 区間、次いで頻度の高い B 区間、残りの3分の1を C 区間とすると、頻度の高い A 区間には 「友人 (先輩) に相談する」 「ものに八つ当たりして発散する」 「寝る」 「音楽を聴く」 の4項目が含まれた。
      次に自由記述で得られた対処行動の内容には類似性のあるものがあるので、 SCI の対処行動8分類に基づき内容を大分類した。〔計画性〕 :自分で考える、自分の中で解決する、〔社会的支援模索型〕 :友達に相談する、仲の良い人に相談するなど、〔逃避型1〕 :ものにやつ当たりして発散するなど、〔逃避型2〕 :寝るなど、〔逃避型3〕 :音楽を聴くなど、〔隔離型〕 :忘れる、考え方を変えるなど、〔自己コントロール型〕 :自分で自分を鎮める、我慢するなど、〔対決型〕 : 原因になった当人に相談する、原因に八つ当たりする、に分類した。これらの分類に当てはまらないものを 〔その他〕 とした。その結果、大分類の中で最も多かったものから順にあげると1位:社会的支援模索型31頻度28名 (30%)、2位:逃避型3 (音楽を聴く等) 21頻度17名 (18.3%)、3位逃避型2 (寝る等) 20頻度16名 (17.2%) であった (表4-24-3参照)。
    表4-1 対処行動の内容分類(SCI に基づく分類)-1回目調査
    1. 対処行動なし16人 (16件数)

    項目数

      ない

    15

    特に苛々や悩みはない

    1

    16

    2. 対処行動あり77人 (132件数)

    項目数

    1)計画型 (Planful Problem Solving)  
          自分で考える

    7

    自分の中で解決する

      3

    悩む

    1

      

    11

    2)社会的支援模索型 (Seeking Social Support)

     

     

    友達(先輩)に相談する・親子

    21

    兄弟に相談する・話す・愚痴る

    4

    仲の良い人(誰か)に相談する・聞く

    4

    両親に相談する・話す

    2

     

    31

    3)逃避型 1 (Escape-Avoidance)

     

      ものに八つ当たりして発散する

    10

    人に当たる

    4

    八つ当たり

    1

     

    15

    4)逃避型 2 (Escape-Avoidance)  

     

    寝る

     9

    ゲームをする

    5

    マンガ本を読む

    4

    とことん遊ぶ

    1

    テレビを見る

    1

     

    20

    5)逃避型 (Escape-Avoidance)

     

     

    音楽を聴く

    9

    好きなことをする

    4

    運動(部活)をする

    2

    歌う

    2

    本を読む

    1

    買い物をする

    1

    お菓子を作る

    1

    外に出て深呼吸する

    1

     

    21

    6)隔離型 (Distancing)  
      忘れる

    5

    考え方を変える

     3

    何とかなるさと思う

    2

    何も考えない

    2

    楽しいことを思い浮かべる

    1

    祈り、 自分自身を明るく変えていく

    1

    何をすってわけでもない

    1

     

    15

    7)自己コントロール型 (Self-controlling)

     

      自分で自分を鎮める

    3

    おさえる

    1

    我慢する

    1

    静かにして落ち着く

    1

    自分の中にため込んでおく

    1

    無口になる

    1

    閉じこもる

    1

     

    9

    8)対決型 (Confrontive Coping)  
      本人に相談する

    1

    原因に八つ当たり

    1

     

    2

    9)その他  
      騒ぐ、 わめく、 大声を出す

    4

    泣く

    2

    怒る

    1

    笑う

    1

     

    8



      それぞれのカテゴリーを性別で比較した結果、男女間に有意差のあるものがあった。社会的支援模索型は女子44.9%対 男子13.6%であり、女子に多く、記入なしは男子29.5% 対 女子6.1%であり、男子の方に多かった (表4-3参照)。
    表4-2 1回目性別による対処行動 (自由記述)

    N=93

    分類

    男子44:複数回答

    女子49:複数回答

    全体93

    頻度

    頻度

    頻度

    記入なし***

    13

    23.6

    3

    3.2

    16

    10.8

    計画型

    3

    5.5

    8

    8.6

    11

    7.4

    対決型

    1

    1.8

    1

    1.1

    2

    1.4

    社会型支援模索型***

    7

    12.7

    24

    25.8

    31

    20.9

    自己コントロール型*

    2

    3.6

    7

    7.5

    9

    6.1

    逃避型 1

    8

    14.5

    7

    7.5

    15

    10.1

    逃避型 2

    8

    14.5

    12

    12.9

    20

    13.5

    逃避型 3

    7

    12.7

    14

    15.0

    21

    14.2

    隔離型 *

    3

    5.5

    12

    12.9

    15

    10.1

    その他

    3

    5.5

    5

    5.3

    8

    5.4

    合計

    55

    100.0

    93

    100.0

    148

    100.0

    表4-3 1回目性別による対処行動 (自由記述)

    人数  %

      男子44人

    女子49人

    全体93人

    記入なし ***

    13人

    29.5

    3人

    6.1

    16人

    17.2

    計画型

    3

    6.8

    7

    14.3

    10

    10.8

    対決型

    1

    2.3

    1

    2.0

    2

    2.2

    社会型支援模索型 ***

    6

    13.6

    22

    44.9

    28

    30.1

    自己コントロール型 *

    2

    4.5

    7

    14.3

    9

    9.7

    逃避型 1

    8

    18.2

    5

    10.2

    13

    14.0

    逃避型 2

    8

    18.2

    8

    16.3

    16

    17.2

    逃避型 3

    6

    13.6

    11

    22.4

    17

    18.3

    隔離型 *

    3

    6.8

    9

    18.4

    12

    12.9

    その他

    3

    5.5

    5

    5.3

    8

    5.4

    複数回答のために人数合計は対象者数を超える
       +P〈0.10 *P〈0.05 **P〈0.01 ***P〈0.001

  4. 記入なし群の特徴、1回目自由記述式で対処行動の無記入のものを 「記入なし群」 として、記入あり群との間でその特徴を比較した。性別では 「記入なし」 が男子に多く16人中13人 (P<0.01) であった (表4参照)。健康状態では記入あり群と 「なし群」 の間に有意差はなかった。また、2回目の SCI 得点段階スコアとの関連では 「記入なし群」 は社会的支援模索型で有意に低く (P<0.01) 「記入なし群」 の得点段階3~4のものは16人中1人6.3% (記入あり群77人中39名50.6%) であった。(表5参照)
    表5 2回目 SCI 対処のカテゴリー別による割合 (SCI 段階 3~5)

    N=93

     

    記入あり77:複数回答

    記入なし16:複数回答

    全体93

    分類

    頻度

    頻度

    頻度

    計画型

    36

    13.8

    7

    15.2

    43

    14.0

    対決型

    40

    15.3

    8

    17.4

    48

    15.6

    社会的支援模索型
    **

    39

    14.9

    1

    2.2

    40

    13.0

    責任受容型

    21

    8.0

    6

    13.0

    27

    8.8

    自己コントロール型

    26

    10.0

    5

    10.9

    31

    10.1

    逃避型

    40

    15.3

    8

    17.4

    48

    15.6

    隔離型

    24

    9.2

    4

    8.7

    28

    9.1

    肯定評価型

    35

    13.4

    7

    15.2

    42

    13.7

    合計

    261

    100.0

    46

    100.0

    307

    100.0


    表6 健康状態と社会的支援模索型との関係 (1回目)

    N=93

    社会的支援の記述
     

    なし(%)

    あり(%)

    合計(%)

    良好群

    25(59.5)

    17(40.5)

    42(100.0)

    その他(非良好)群

    40(78.4)

    11(21.6)

    51(100.0)

    合計

    64(69.9)

    28(30.1)

    93(100.0)


                
    表7 健康状態とコントロールとの関係 (2回目)

    N=93

    SCI 段階得点

     

    1~2(%)

    3~5(%)

    合計(%)

    良好群

    26(81.3)

    6(18.8)

    32(100.0)

    その他(非良好)群

    36(59.0)

    25(41.0)

    61(100.0)

    合計

    62(66.7)

    31(33.3)

    93(100.0)

    P<0.10

    SCI 段階
      1:ほとんどない  2:比較的少ない 3:普通程度
      4:かなり強い 5:非常に強い


  5. 健康状態と対処行動:健康状態と1回目の対処行動との関係を検討した結果 「とても良い」 「やや良い」 を良好群として、「ふつう」 「やや悪い」 「悪い」 「不明」 をその他群に2分して比較した。その結果、健康状態良好群での社会的支援模索型42名中17名 (40.5%) に比較してその他群51名中11名 (21.6%) であり、社会的支援の記述が多い傾向にあった。(表6参照)。2回目も同様に比較した。その結果、健康良好群には自己コントロール型の強いもの (得点3~5) が32名中6名で (18.8%) でありその他群には61名中25名 (41.0%) であった。健康状態と自己コントロール型との間には負の関係が見られた。(表7参照)
 
 

IV 考察

  1. 中学生の悩みや困ったときの対処行動として最も多かったのは、社会的支援模索型 (30.1%) であり、次に逃避型3 (音楽を聴くなど)、逃避型2 (寝るなど) であった。
      性別でみると女子には社会的支援模索型が有意に多かった。対処行動の回答形式別にみると自由記述による 「記入なし」 は男子に多かった。すなわち、男子は女子と比べて自由記述による質問に対して回答し難い、または 「面倒である」 と感じる傾向にあることが推測される。自由記述で記入しなかったものについて詳細に検討した結果、2回目のインベントリー法による SCI 質問項目では、記入している者がおり、彼らの対処行動を知ることができた。自由記入法とインベントリー法という異なる調査技法で調査を行った結果、両方の有効性と限界が明らかになった。このことは、質問項目方式は簡便で量的な回答を得やすい利点があるが、一方、個人の質的側面を知るには限界のあることを実証している。言い換えれば自由記述式では、無回答でも、そのこと自体に意味のあることを示唆している。
  2. 健康状態良好群には、社会的支援模索型が多く、一方、自己コントロール型は少ない傾向にあった。この結果は健康状態が良いことと、社会的支援には関連のあることを推測させるものである。社会的支援と抑うつ状態との関係に関して高倉らは、高校生の心理的ストレス過程を把握する研究において、抑うつと心理社会的要因との関連性を検討し、知覚されたソーシャルサポート数が多いものは抑うつ症状が低い傾向を示す 6) と報告している。今回の調査によると社会的支援と健康状態との関連結果も、この報告を支持するものである。また2回目調査において健康状態と SCI “自己コントロール型” との 関係を検討した結果、健康状態が 「ふつう」 「やや悪い」 「悪い」 「不明」 と回答した“その他群”の41.0%が“自己コントロール型”の強い特性に属し、健康状態“良好群”の18.6%より多い傾向があった。“自己コントロール型”の評価は、 SCI の解釈によれば、「自分の感情・行動を制御する、他人の気分を害さない、慎重型」 とされる。“自己コントロール型”を対処法として選択したものは、ストレスに対して有効に働いた場合、感情をコントロールして、冷静に、対人的トラブルを起こさず、仕事などむらなくできると考えられる。 しかし、対処法が有効に働かない場合、感情を表出できず、自分のなかにため込んで、問題が潜在化しいやすいこともあると考えられ、健康状態に好ましくない影響を及ぼしている可能性もあることが示唆される。従って、今回の結果は、健康状態の良くない場合に “自己コントロール型”特性傾向を有するものもあることを考えて、潜在化した問題に対して、考慮する必要を示唆している。また、社会的支援が健康状態にこのましく作用する可能性が示唆された。
 
 

V 結論

 東京都内の国立大学附属中学校の2年生を対象に、対処行動とその内容、対処行動と健康状態との関連性を検討することを目的として、2回の形式の異なる質問紙法による調査を行った。その結果、健康状態“良好群”と“社会的支援模索型”の対処行動との間には、関連があり、また、健康状態“非良好群”と“自己コントロール型”の特性傾向との間には関連のあることが知られた。対処行動において“自己コントロール型”のものは、問題が潜在化しやすいとも考えられ、留意する必要があること、社会的支援が健康状態に好ましく作用する可能性が示唆された。

 
 
謝辞

 本研究にあたり、アンケートにご協力いただいた東京都内国立大学附属中学の2年生の皆さんに感謝する。



文献

1) 上田礼子編:ライフサイクルと保健活動の実践-周産期・乳幼児・小児期-, 184-186, 出版科学研究所, 1985.
2) 伊藤武樹:中学生の悩みとその対処行動, 学校保健研究, 35, 209-219, 1993.
3) 伊藤武樹:中学生の悩み及び対処行動を規定する要因の構造, 学校保健研究, 36, 145-157, 1994.
4) 伊藤武樹:悩み対処行動を規定する要因の構造, 学校保健研究, 36, 496-505, 1994.
5) 日本健康心理学研究所:ストレスコーピングインベントリー・自我態度スケールマニュアル実施法と評価法, 1-18, 実務教育出版, 1996.
6) 高倉実, 他:高校生における抑うつ状態と心理社会的要因との関連, 学校保健研究, 39, 233-242, 1997.

 
 
 

Research on the Coping Skills of Junior High School Students.
-In the Face of Difficulties or Troubles-

Yoko Amano, B.HCN・Reiko Ueda, D.M. Sci・Ayako Sakurai, B.N.・Yoko Asato M.H. Sci
 

 The purposes of this study are to investigate the coping skills of junior high school students andto find a support system for those who have latent problems.
We conducted the study twice by utilizing questionnaire forms. Subjects of the study were second-grade students of a junior high school, attached to a national university in the metropolis of Tokyo.
The questionnaire included items that explored the students' health, their self-perception, copingskills in the face of psychologically disturbing social situations, and SCI related matters.
Results: the first and the most popular coping skill among subjects is found to be that of seekingsocial support (30.1%), the second is that of escape through listening to music, and the third is that ofescape through sleeping.
Female students exhibit most conspicuously the type of coping expressed by seeking social support,more so than boys. Many students with good health are found to exhibit coping skills in the form ofseeking social support and few of them are found to be the "self-control type". Students of the"self-control type" showed a tendency to have latent problems. The results of this study suggest theurgent necessity of reaching the latter group.
Key words: junior high school students, troubles, stress, coping skills, social support.

 
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