紀要1号 報告1
 

入院中の小児の遊びの特性
-幼児・学童の遊びへの参与観察-

 沖縄県立看護大学 安里葉子
 

I 緒言

 小児は入院することによって、今まで生活してきた家庭・地域環境から新しい病院という環境に慣れ、疾病の治療・処置による苦痛、恐怖心、不安などの体験を余儀なくされる。それらは小児の成長・発達に影響するといわれ、特に乳幼児は言語により自分の思いを表現することが困難であり、入院による小児の反応は不機嫌や拒否、退行現象、憾黙などに現れる。ところで、遊びは小児の自発性を促し、情緒の安定や社会性の発達を促す。小児は遊びをとおして自分の気持ちを表現し、不安や苦痛を軽減することがいわれている。しかし、病院での遊びの環境は充分とはいえない 1)~4) ことも報告されている。保母が導入されている施設もあるが 5) 今回は保母が導入されていない総合病院の小児科病棟での遊びの場面を観察し、入院中の小児の遊びの必要性について考察したい。

 
 

II 研究方法

対象:総合病院の小児科病棟に入院中の小児5名である。年齢は3歳~12歳。性別は男3名、女2名である。
但し、対象となった小児科病棟に保母は配置されていない。病棟の日課に特別に設定された遊びはないが年間行事としての集団遊びは行われている。
方法:自然参加観察法であり、小児が遊んでいる場面を筆者が実際に小児と関わりを持ちながら、情報を収集した。小児の観察の要点は小児との関わりの状況から、小児の言動、表情について把握した。

 
 

III 結果

1. 幼児の人形遊びの場面から

事例1 (平成10年 N 病院に入院中の小児で、筆者の前任地である看護学校において、実習中に学生が受け持った事例である)
患児:Aちゃん、3歳、女児       
疾患名:インスリン依存型糖尿病
家族構成:両親と7ヶ月の妹の4人家族である。
  Aちゃんは平成10年5月に発症し、N病院小児科病棟に入院し3ヶ月が経過している。Aちゃんの治療は1日4回 (0時、8時、12時、18時) の血糖値の測定とスライディングスケールによりインスリン注射を行っていた。Aちゃんの食事は1200Kcl であり病院食以外は制限されていた。Aちゃんの血糖値は高血糖時は300~400台を示すことがあった。血糖値が高くなるといらいらしたり、何度も水をほしがったりした。他者が近寄ることを嫌がったりもした。不機嫌に「あっちにいけ」、「くるなー」 という言動がきかれた。また高血糖時、低血糖時に症状を訴えないこともあった。年齢も第一次反抗期の時期にあり、血糖値のコントロールが困難なことに加え反抗期でAちゃんの情緒の変動は激しかった。母親はAちゃんの状況をよく理解し受け止めていた。時には、Aちゃんのしつけのために叱る場面もみられた。しかし、母親はAちゃんの症状による甘えを充分に受け止めることはあっても、日常生活の面でのしつけに関しては毅然とした態度で接していた。Aちゃんにとっては自分の疾患の理解は難しく、病気のことは「注射しないとごはんがたべれない」 と受け止めていた。母親は生後7ヶ月の患児の妹の世話を実家に協力を得ていた。母親は毎日、Aちゃんに付き添い血糖値の測定とインスリン注射を行い、日常生活の世話をしていた。Aちゃんの食事に関しても充分に理解していた。Aちゃんは3歳であるが年齢より言葉がはっきりしている。食事は自立しており、排泄は訴えることができ、後始末は援助が必要であった。インスリン注射に関しては母親や看護婦の監視下でAちゃん自身でノボペンを組み立てることができた。母親や看護婦が臀部に皮下注射を実施する際、嫌がったり暴れたりすることはなく我慢していた。受け持ち2週目にAちゃんが学生の手をひいてプレイルームに導き「お医者さんごっこしよう」 と言って誘った。Aちゃんは自分で人形や電話の玩具を選び準備した。そしてテーブルに人形を寝かせて、人形に話かけながら「お人形さんに洋服を着させて」、「寝てくださいね、お注射しますからね、ね」 と言いながら注射器を手で真似て人形の前腕部に注射した。学生が「なんで注射するの?」 と聞くと、Aちゃんは 「注射しないとダメだからね」 といった。その後はそのような場面は見られなかった。Aちゃんは入院生活が3ヶ月近くになり、個室での入院でありAちゃんの遊び相手は母親と同じく長期に入院している1歳7ヶ月の G くんと G くんの母親であった。Aちゃんは他の患児との関わりはほとんどなかったため、学生はAちゃんに一緒に他児と遊ぼうと誘った。しかし、Aちゃんから他児に対して「こわいから」、「いや、いいよ、二人で遊ぼう」 と言動がきかれた。学生はその都度、Aちゃんの見ているまえで、意図的に他児に話しかけたり、挨拶したりした。そうするうちに、Aちゃんは自ら他児に手を振ったり、話かけたりするようになった。また、学生はAちゃんとシャボン玉をしたり、新聞紙で作った兜と剣でチャンバラごっこをして積極的に遊びを工夫した。Aちゃんにうれしそうな笑顔やはしゃぐ姿がみられた。

 
 
2. 幼児と絵本の読み聞かせの場面から

事例2 (平成11年10月、O病院小児科病棟に入院中の患児)
患児:Kくん、4歳、男児
疾患名:気管声門軟化症、嚥下機能不全症
家族構成:母親と5歳の姉の3人家族である。
Kくんは平成7年に切迫早産で在胎週数28週、低出生体重1179gで出生した。O病院 NICU に入院し、出生時は人工換気療法を行っていた。K くんは平成9年1月に気管切開されている。現在は気管切開部にポーテックスが装着されており、酸素療法はなく、定期的にネブライザー吸入と必要時に気管内吸引が行われてる。
K くんは気管切開されているため言語的コミュニケーションは困難である。そのため表情や、身振りでコミュニケーションを図かっている。相手が話していることは理解しており、嫌なときは表情をしかめたり、首を横に振ったりする。嬉しいときには、笑顔を見せ、にこにこしている。物を指でさしたり、確認したいときには、相手の顔を見て反応をみている。K くんの食事は経管栄養であり、1日6回 (1回量は200cc) のミキサー食を胃瘻から注入している。経管栄養の注入の際、Kくんは自分で服をめくり胃瘻部を露出して準備している。そして、胃瘻の接続のボタンを自分で開いてイルリガートルとの接続ラインを自ら接続することができた。経口摂取は少量の水分とガムを噛むことは許可されており、それ以外は禁止である。病棟1回目の訪室時はプレイルームで他児に絵本を読み聞かせている時、K くんは看護婦に抱っこされながら入室してきた。K くんは不機嫌で手や足をばたつかせて今にも転落しそうであった。K くんの機嫌をなだめるために、抱き留めて「はらぺこあおむし」 (エリック・カール著) の絵本をみせながら 「りんごを1つたべました。ぱくっ、ぱくっ 、ぱくっ 」 と言うと、 K くんに笑顔が少しみられ面白がって見ていたが集中できずに、暴れたために看護婦と共に退室した。病棟2回目の訪室時、絵本を何冊か持参し K くんに見せると 「ひとまねござる」 6) を選んだ。絵本のページをめくりながら、読み聞かせをするが1ページを読み終わるのをまてず、集中できずに、すぐにページを次々にめくりはじめた。しかし、絵本の主人公のさるのじょーじがレストランの厨房に入り、テーブルのうえの大きなナベのふたを開けようとする場面を、K くんはじーっと見入っており、何度も何度もその場面を開いては見ており、興味を示していた。筆者が 「スパゲティーだよ」、「じょーじ食べたいって」と言い、ぱくっと食べる素振りをした。すると K くんも自分の口元に手を持ってきて、食べる素振りをして嬉しそうに笑った。しばらくすると口元に手を持ってゆき、すぐに手と首を何度も横に振り、表情をしかめて拒否の様子を示した。筆者が「Kくん食べないの?」 と聞くと K くんはベットの柵にかけてあるビニール袋を指さして、手を口元に持っていった。袋の中にはガムが入っていた。「ガム食べるの?」と聞くとうなずいている。経口摂取は禁止されており、水分は少量づつは許可されている。K くんの食に対する欲求があるのではないかと思われた。しかし、食べる素振りとそれを拒否する様子から「食べたいけれども食べてはいけない」 と言う思いがKくんのなかで葛藤しているように見えた。病棟から退室するとき絵本を持って帰ろうとすると、K くんは嫌がり絵本を手放そうとはしなかった。K くんと約束をして絵本を置いていくことにした。K くんとの約1時間のやりとりのなかで、呼吸状態は安定しており、咳嗽はなく顔色にも変化はなかった。3回目の訪問時には発語ができない K くんにとって絵本をとおして物の名前、文字、発声を覚えていくことが、今後の他者とのコミュニケーションや、自己を表現していくうえで必要ではないかと考えた。そこで K くんに 「のりもの」、「むし」、「いろ」、「やさい」、「たべもの」 の絵本を見せると 「たべもの」 の絵本を選択し興味を示した。母親も絵本に興味を示し訪問時には「どんな絵本がありますか」 と絵本を借用していった。その2日後に Kくんは退院した。看護婦からの情報によると、床頭台からお菓子を取って食べたり、飲み物を飲んだりすることがあり、食べたい欲求が強かったということであった。

 
 
3. 学童期の設定された集団遊びの場面から

(平成11年10月、O病院小児科病棟に入院中の学童である)
1) 患児紹介
Iさん (12歳、女児、血液疾患、入院期間1ヶ月)、物静かでおとなしく、ビーズの手芸が得意である。年下の児に対してよくかわいがり、同室の乳児を母親が世話をしている場面を見て「かわいい」 といったりする。病室では年長児の役割意識を持っている。
Y 君 (9歳、男児、血液疾患、入院期間2ヶ月)、病室訪問の都度に一人でベット上でゲームボーイやファミコンをしていることが多い。決められたことをよく守り、しっかりしている。
H 君 (7歳、男児、膠原病、入院期間1ヶ月)、人なつこく、訪問の度に甘えてきて 「きょうは何して遊ぶの?」 と尋ねてくる。H 君は母親とプラモデルを作ることを好む。H 君は I さん、Y 君を慕っている。患児等は同室であり、Y 君と H 君は喧嘩もするが仲良しである。患児等の病状は比較的安定しており、毎日、病棟内に併設されている院内学級 (9時~14時30分頃まで) に通い、その後は病室で過ごしていることが多い。I さんとY 君は感染予防のためにマスクをしている。

2) 魚釣りゲームについて
材料の画用紙、色紙を使用して魚や貝などをクレヨンで描き、形を切り抜く。切り抜いた魚や貝の裏に数字で点数を記入しクリップをつける。釣り竿は割り箸とモール、紐を使い、釣り糸の先には磁石を付ける。
ゲームのルールは各々、釣った魚の点数を合計して競う。
場所は院内学級兼プレイルームで行った。

3) 遊びの実際
釣り竿は割り箸を使用した。釣り糸は患児等が自分なりにモールをつけたり紐を長くしたり工夫している。患児等はそれぞれ好みの色画用紙に魚や貝の絵を描いている。色紙で提灯のように立体的に工夫した物もあった。点数は自由に数字を記入した。一桁から億単位の数字を記入していた。釣り糸にモールを付け磁石につなげるところがうまく固定できず、はずれたりするため、何回かモールで固定していた。磁石を多めに付けて磁力を強くしたり等の工夫も見られた。工作中に病室ではいつもマスクをしている Y 君が筆者に 「なんでマスクしているかわかる?」 と問いかけた。「分からない、なんで?」 と聞くと 「ばい菌がはいるから」と答えた。「そう、ばい菌が入るの、ばい菌が入ると風邪引くの?」 と尋ねると、本人は黙っている。そして 「貧血だから」 と言う。「貧血ってどんな病気?」と聞くと 「わからん」 といい、すぐに 「血が薄くなる」 と答えた。筆者が 「ふらふらするの?」 と聞くと 「しない」 と言いながら魚を描いている。しばらくして「ここの病室に4号室はないんだよ」 と言う。「そう、それじゃ、1、2、3、5、6、7、8 号室だね」 「なぜ4号室ないのかな?」と聞くと、Y 君は黙って工作していた。Y 君の意外な質問に筆者はどのように対応してよいのか戸惑った。Y 君は 「ここの病室に4号室はないんだよ」と言葉で何を伝えたかったのだろうか。前回の訪問時に筆者が Y 君と仲良くなれるきっかけとして 「なんでマスクしているの?」と尋ねた。それに対してY君は答えず、ファミコンをしながらただ黙って首をかしげていた。Y 君がマスクについて質問したのは、そのことを思い出したのだろうと思った。
それから、 I さん、Y 君、H 君の3人でゲームを3回戦行なった。魚を釣っているとお互いの釣り糸の磁石がくっいたり、釣り糸が絡んだりなどのハプニングも見られ、Y 君が無理にひもを引っ張ろうとすると I さんが注意し、お互いに糸を解くことを協力して行っている。また、H 君が一度に何匹も魚を釣ったので、「いんちきだよ」とY 君に注意を受け、H 君は行動を制される場面が見られた。患児等に生き生きした笑顔がみられ、競って魚をつり、釣ったことに満足そうであった。魚の点数を合計する場面ではY君は算数が得意のようで、すぐに計算を熱心にはじめた。低学年の H 君は計算の途中 「わからない、難しい」 と言い、IさんやY君 に足し算の計算を教えてもらいながら行っていた。遊びの場面には他の入院児の母親も参加しながら、その場の雰囲気を盛り上げてくれた。ゲームの結果を表に記入した。患児等から「楽しかった」 という言動が聞かれ、積極的に参加していた。

 
 

IV 考察

 事例1の A ちゃんはインスリン依存型糖尿病であり、発症年齢が早く、長期入院とインスリンの注射、血糖値の測定、食事制限によるストレスがあった。A ちゃんは第一次反抗期であり、患児の訴えが症状による苦痛の現れによるものなのか、反抗期の不機嫌によるものなのかを確かめることは難しかった。A ちゃんの血糖値と訴え、機嫌をその都度、母親に確認しながら、症状の観察を行った。A ちゃんは自ら玩具を準備して病院ごっこを行った。ごっこ遊びは幼児期に盛んに現れてくる遊びであり、自分が見たり聞いたりしたこと、生活の中で体験してきたことを虚構の場面で再現している 7) という。Crocker 8) は病院における遊びの利点について「環境やなじみのない感じや、家庭と病院の極端な違いを少なくする。遊びを通して、好きなことや、心理的混乱の恐れを表現でき、安全な方法でエネルギーを発散させることで事故やけがを少なくさせる。さらに、“病院ごっこ”をして遊ぶことで、処置や機械器機への恐れをなくし退屈な時を過ごさなくてすむようにもなる」と述べている。A ちゃんの人形に注射をする行為は患児自身の毎日の血糖値測定とインスリン注射の処置を再現することで、自己のストレスを発散し、不安や恐れを表現したのではないかと考えられる。また、Barbara F 9) は病院ごっこについて 「子どもが苦痛を伴う処置や制約された日課を経験しなければならないことが多かろう。子どもが、これらの経験を正しく自分の中に調和させていくためには、自分の感情や緊張を表現できるような機会を、遊びのなかで与えなければならない」と述べている。Aちゃんは学生との関わりのなかで安心して心を開くことができ自ら遊びを展開したと思われる。Aちゃんの遊びの場面から、Aちゃんの処置に対する受けとめ方を理解することができた。さらに A ちゃんが他児との交流をもてなかったことに対して学生が意図的に他の患児への声かけをしたり、日常生活の中に積極的に遊びを取り入れた。それによって、A ちゃんに少しずつ反応が見られ、他の患児も関心を示すようになり、また情緒の安定がみられた。このことは、 遊びが A ちゃんの不安やストレスの軽減に効果があったといえる。上田 10) は入院児と遊びのなかで 「大人は、子どもの遊びの意義を認めながら遊びの雰囲気を生活の場につくってやることが大切であろう」と述べている。入院生活の中で小児に意識的に遊びの機会を提供していくことは大切である。しかし、実際には治療、処置のケアで充分に時間がもてない現状にある。諸外国では、病棟にプレイワーカーや保母、ボランテイアがおり、遊びの環境は充実している。今後は、病棟の中でどのように遊びの提供をしていくかが課題である。
  事例2のKくんは絵本のある場面を何度も興味深く見たり、絵本を選択させると食べ物の絵本のみに興味を示したり、経口摂取を禁止されているが看護婦の目を盗んで、お菓子を食べたり、飲み物を飲んだりすることがあった。また、Kくんは絵本の場面をとおして筆者の食べる素振りをみて、真似て同じ素振りをするが、それを否定する素振りも同時に表現している。Kくんなりに食事を口から食べたい、食べてみたい欲求とその行為が禁止されていることの葛藤がみられた。幼児期は表現能力が未熟であり、自己の気持ちを他者に伝えることが困難な場合が多く、泣いたり、不機嫌になったり、黙ったりすることがあり小児の気持ちを理解することは難しい場合がある。特に患児の場合は気管切開されているために、言語的コミュニケーションは困難であり、自己の思いを表現したり、他者に伝える手段が限られてくる。その中で、患児の食べることへの思いやストレスがどのくらいであったかは、計り知れない。患児が絵本を選択したとき、絵本を見ることで食べたい欲求を強くするのではないかと思った。しかし、患児が絵本に関心を示したことで食事に関する患児の受け止め方を確認することができた。さらに、患児が食べる素振りを見せたとき、非常に嬉しそうであった。「こどもは物語のなかの人物に自分自身を同一視し物語りの世界に挑戦することもできる。自分自身の感情を物語りのなかで表現する」 11) という。絵本という媒体をとおしてKくんの思いを確認できたと考える。そして、絵本を媒体として患児とのやりとりの中で、看護者が患児の気持ちを確認したり、患児の感じていることをどのように引き出していくのかが大切であると思う。幼児の2事例から、患児等は病棟での日常生活の中で、自分自身の関心のあることを遊びの中で表現していることがわかった。小児の発達段階や疾病、治療、処置などによる影響を理解し、小児の置かれている状況をふまえながら遊びを援助していく必要があると考える。
  学童期は家庭、学校、地域へと行動範囲が拡大し、対人関係も親、兄弟から友人、学校の教師、地域の人々へと拡大していく。その中で多くの他者と関わりを持つことによって対人関係を学び、社会性が発達していく。入院中は小児の社会性が育ちにくい状況にある。対人関係も病棟内の入院児やその家族、医療関係者、院内学級の教師などで限られてくる。筆者が計画した病棟での魚釣りゲームは学童期の患児等にとっては物足りないのではないかと思った。しかし、患児等は集団遊びの中でルールを守り、お互いに協力しながら、競い合うことができた。また、遊びのなかに足し算をして合計点数を出す学習の要素を取り入れたことでお互いに教え合う場面もみられた。低学年のH君にとっては桁の多い数字の計算は難しく、年長児のY君やIさんの協力を得た。学童期の患児には遊びに学習的要素も含む知的な欲求を満たす内容を考える事が大切であり 12) 今回の遊びは患児等にとっては満足できたのではないかと考えられる。集団遊びは3人と少人数ではあったが年齢の異なる者同士の関係の中で、お互いに刺激し合うことができた。そして、患児等の遊びの中で起こる他者とのやりとりをとおして自己統制力、協調性、協力などが培われ、社会性を養うことができると考える。湯川は 13) 「入院児が集団で遊ぶ体験から自分の強さを発見し、弱さに直面したり、自分の思いがかなったり、かなわないなどの経験をする。」と言い、遊びながら、社会的順応や適応について学んでいくと述べている。駒松は 14) 遊びへの援助のなかで 「学童期の子どもの場合は、日課のなかに学習や遊びの時間を取り入れて、規則正しい生活ができるようにする必要があること、また許される範囲でプレイルームに出て他の子どもたちとの交流がもてるようにすることが重要である」と報告している。
  特に慢性疾患で長期入院を余儀なくされている患児等にとって、家庭、学校、地域から隔離されることは、社会との交流が少なく、自分自身が社会から取り残されたような孤独感を味わうことにもつながる。患児等にとって病院は治療の場であり、生活の場でもある。患児等の生活に可能な限り、他者との交流の場を設けたり、遊びのなかで、満足感や達成感を味わうような体験を考慮することは大切である。
  Y君が遊びの中で何げなく病気のことや、病室のことを表現したのは何故だろう。1週間に1回病棟を訪問しY君と関わり初めて3回目である。筆者からはY君の病気について触れたことはなかった。Y君の「ここの病室4号室はないんだよ」 という、筆者自身が予期せぬY君の質問に戸惑いを感じた。Y君の言動はただ単に、数字の順序性の欠落していることと捉えたのか、それとも、病気に対する不安なのか、「4・・し・・死・・」を意味しているのか否かは確認することができなかった。小児は遊びのなかで何気ない日常の会話の中に小児が感じていることを表現しているという。遊びは小児とのコミュニケーションの場でもある。その表現の意味を見逃さずに小児の内面への理解ができるような関わり方を考えていきたい。

 
 

V 結論

幼児・学童の遊びの場面から、小児自身の関心事を表現していた。病棟での日課のなかで、遊びの機会の提供を行うことが、小児の成長・発達に必要であることが示唆された。

 
 

1) 楢木野裕美:日本の遊びをめぐる環境の実態, 小児看護, 22(4), 445-449, 1999.
2) 鈴木敦子:入院している子どもの遊びに対するイギリスにおける考えとその現状, 小児看護, 22(4), 440- 444, 1999.
3) 北島靖子, 小野敏子:小児病棟における 「遊び」 に関する実態調査-自由記載項目の検討-, 順天堂医療短期大学紀要, 8, 89-98, 1997.
4) イヴォンニー・リーンドクヴィスト, フォン・オイラー三根子, 野村みどり:プレイセラピー 子どもの病院&教育環境, 株式会社建設技術, 1998.
5) 斉藤礼夏, 川島眞美, 渡辺美由紀:小児病棟における遊びの援助-医療保母の活動をとおして-, 小児看護, 22(4) 339-405, 1999.
6) H.A. Rey:ひとまねござる, 15, 岩波の子どもの本, 1946.
7) 伊藤隆二, 坂野登:講座入門 子どもの心理学4 子どもと遊び, 44, 日本文化科学社, 1987.
8) 梶山祥子, 鈴木敦子:悩める子どものこころと看護, 154, 医学書院, 1988.
9) 鈴木敦子, 山中久美子, 藤井真理子, 楢木野裕美, 吉田智子:悩める子どもの遊びと看護, 87, 医学書院, 1988.
10) 上田禮子:入院児と遊び, 小児看護, 12(9), 1147, 1989.
11) 小嶋謙四郎・編:小児看護心理学, 171, 医学書院, 1971.
12) 小沢道子, 片田範子:標準看護学講座 小児看護学29, 214, 金原出版株式会社, 1985.
13) 湯川倫代:集団遊びの工夫, 小児看護, 6(5), 543, 1983.
14) 駒松仁子:遊びへの援助:小児看護, 13(4), 439, 1990.
 
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