第1節 本学の現況
1.大学名 沖縄県立看護大学
2.所在地 沖縄県那覇市与儀1−24−1
3.学部等の構成
看護学部看護学科
保健看護研究科
別科助産専攻
4.学生数及び教員数(平成22年4月1日現在)
学生数:看護学部看護学科 328名
保健看護研究科博士前期課程 17名、後期課程 13名
別科助産専攻 20名
教員数:看護学部看護学科 34名(内、大学院兼務20)
別科助産専攻 3名
第2節 本学の特徴
1.沖縄県の島嶼の概要
沖縄県は、我が国の最南端に位置し、東西1,000Km、南北400Kmの広大な海域に160 の島々が点在する島嶼県である。このうち、沖縄本島を除く有人離島は39島である。これら離島は、県土綿製の45.2%を占め、県総人口の約10%の約13万人が生活している。最近の平均高齢化率は、県全体の15%に対し、離島町村平均は約24%の超高齢社会である。
島嶼は、亜熱帯気候で美しい珊瑚礁の海に代表される豊かな自然、伝統文化やゆったりとした生活空間を有している。一方、その地理的及び自然的条件などから医療・福祉などの生活環境面で低位にあるほか、情報通信の基盤整備の遅れ、若年層の慢性的な流出による人口の高齢化の進行など多くの課題がある。
2.本学の概要
本学は、39の有人離島を有する島嶼県の沖縄本島に所在する看護系の単科大学である。本学は、県内外からの社会的要請により、質の高い看護職者の養成をめざして、平成11年4月に4年制大学看護学部として発足、平成16年4月に大学院保健看護研究科博士前期課程及び博士後期課程を開設し10年を迎えている。
図1-2-1 沖縄県島嶼の概要
3.本学の特徴
本学は、平成18年度大学機関別認証評価を受け、優れた点として、@大学の使命に島嶼県である沖縄県民への貢献を挙げていること。A大学設置の目的に添って県民の期待に応えるよう、地域推薦入学制度を設け、県内出身者の数を確保していること。B県内に就職した学生のうち、離島に就職した学生の割合が15%と多いこと等を評価された。
また、初代学長である上田礼子名誉教授は、保健看護の概念を提唱した。その概念は「保健看護とは、広く個人、集団(家族、学校、地域、国など)を対象とし、健康現象を生活との関連で文化的枠組みの中でとらえ看護支援を行うこと」である。
1)本学の目的
生命の尊厳を重んずる豊かな人間性を育成するとともに、看護に関する高度な専門的知識や技術を修得させることにより、保健医療福祉の分野において看護を科学的に実践し、人々の健康と福祉の向上に貢献することのできる人材を育成することを目的とする(学則第1条)。
2)入学者受け入れ方針
学則第1条に即して入学受け入れ方針を以下のように定めている。
(1)人の生命と健康に関心を持ち、社会に貢献したいという意欲を持った方
(2)幅広く学ぼうとする、向上心、探求心を持った方
(3)離島・過疎地域医療を含めた保健・医療・看護に関心を持ち、主体的に問題解決に臨む意欲を持った方
(4)異なる文化に関心を持ち、国際的な視野で看護を学ぼうとする意欲を 持った方
(5)本学の教育方針に従い、規則を遵守し、学業の専念できる方
3)教育目標
本学は教育理念として、「本学の教育は、設置の趣旨に基づき、生命の尊厳を重視し豊かな人間性を養い、多様化・国際化の進む社会で幅広い視野を持ち、看護を科学的に実践できる看護職者を育成し、人々の健康と福祉に貢献をめざす」と定め、以下の6つの教育目標を掲げ、学生が習得すべき能力を明示している。
(1)生命の尊厳を尊重する倫理観を備えた豊かな人間性を養う
(2)幅広く学問を学び、知性と感性を高め、創造力を養う
(3)看護の専門職者に必要な知識・技術・態度を修得し、科学的な根拠に基づく判断と問題解決能力を養う
(4)保健・医療・福祉の概念を共有し、関連職種との連携の中で専門職者として看護の役割を担うことのできる能力を養う
(5)人間のおかれた地理的文化的特性を理解し、地域に根差した保健看護活動ができる能力を養うとともに、国際的視野で保健看護活動ができる能力を養う
(6)研究的態度を身につけ、保健看護活動をとおして看護の発展に寄与する能力を養う
なお、教育目標を達成し、確実に学士力を備えた看護職者を育成するために、平成22年度実施に向けて新カリキュラム編成作業中であり、卒業時点の学生像をより具体的に描けるよう検討中である。
4)FD活動
本学のFDへの取り組みは、平成11年の開学時から行われている。主な活動は、「ナーシングリーダーシップ会議」として国外エキスパートによる講演会、児童虐待に関するアクションリサーチ、学士及び修士課程におけるコンピテンシー、看護管理者・認定看護師合同会議等の開催、「若手教員に対するハワイ大学研修」、「シンセサイザーの発行(年1回)」により海外の最新の研究論文をレビュー討論して授業に活かすための企画、「学長奨励教育研究」として島嶼研究や遠隔教育の推進、「新カリキュラム編成の検討」として全学的な勉強会や検討会の開催などである。
5)自己点検評価の取り組み
本学の自己点検評価の取り組みは、開学時(平成11年)から学長を委員長に実施され、外部有識者の参加も得て実施している。
評価結果の反映は、学生教育の改善や教員の教育力の向上、委員会活動等に反映している。主な自己点検評価の実施は以下のとおりである。
○学部自己点検・評価検討委員会(H11〜)
○学生による授業評価(H11〜)
○学生・卒業生による大学の教育評価(H13、H17)
○外部施設による臨地実習および卒業生評価(H17)
○全学自己点検評価検討委員会(外部有識者参加)(H17〜)
○教員による自己評価、委員会等の評価書提出(H17〜)
○大学機関別認証評価の実施(H18)
○アドバイザー会議(第三者評価機能)の実施(H18〜)
○教員の面接による他者評価の試行的実施(H20)
第3節 本プログラムの概要
本プログラムは、平成20年度「質の高い大学教育推進プログラム」の教育方法の工夫改善を主とする取組として採択された。取組名称は「島嶼環境を活かして学ぶ保健看護の教育実践−生活者の視点と協働能力を育くむ体系的な臨地実習−であり、取組期間は、平成20年度〜22年度までの3年間である。
1.取組の概要
島嶼環境を活かして学ぶ保健看護の教育実践として、生活者の視点と協働能力を育くむ体系的な臨地実習を島嶼で展開する。具体的には、島嶼での実習体制づくりと臨地実習環境の整備である。島嶼の実習体制づくりは、大学教員と島嶼の看護職者に島嶼の住民が協力・参加し、教育方法の工夫改善により「島嶼の臨地実習のモデル開発」を行う。臨地実習環境の整備は、ICT環境の整備・構築をすることにより、大学と島嶼環境とのアクセスを改善し、学生の“島嶼で学ぶ”を活性化することである。
学生教育をとおして、大学教員、島嶼の看護職者、島嶼の住民が連携協働することにより、学生の人材養成機能の強化だけでなく、大学教員の教育力、看護職者の実践力、島嶼の住民の役割意識が向上することが期待できる。
図1-3-1 島嶼環境を活かして学ぶ保健看護の教育実践
2.取組の目的
本取組は、本学の教育理念・教育目標である「保健・医療・福祉の概念を共有し、関連職種との連携の中で専門職者として看護の役割を担うことのできる能力を養う」及び「人間のおかれた地理的文化的特性を理解し、地域に根ざした保健看護活動ができる能力を養う」という人材養成機能の強化を図ることである。
学生教育の目的は、学生が、超高齢化社会の島嶼住民の生活に色濃く残る地域文化に触れ、“生活者の視点”を育むと同時に、協働する看護職者の実践をとおして“協働能力”を育むことである。さらに、島嶼での保健・医療・福祉・教育資源不足など不利益を克服するために欠かせないICT活用能力を育てることである。
本取組により、学生は地域の地理的文化的特性を理解し、看護活動の対象を生活の全体性、生活の地域性、生活の個別性、生活の連続性で捉え、学生の主体的な学びにより問題解決能力や看護実践能力の向上が期待できる。
学生の具体的目標は、以下の5つである。
3.教育方法
教育方法は、島嶼の住民、保健看護職者の協力・参加を得て、大学の教職員と協働で行う。島嶼の住民は、講師や民泊、移送ボランティアとして学生に関わり、生活者の視点の学びを補強する。島嶼の看護職者は、地域の専門職者との協働により看護実践と指導を学生にする。大学の教職員は、臨地に出向いた指導またはICTを活用して実習指導する。
4.実施体制と実施計画
1)実施体制
大学には「本補助事業推進委員会(GP推進委員会)」を新設し、支援体制として 「GP事務局チーム」と「GP教員チーム」を置く。
島嶼には、保健医療福祉などの代表者で組織する「島嶼実習推進委員会」を置き、「島嶼実習連絡調整会議」の支援、並びにGP教員チームと連携し、教育目的を推進する。また、「島嶼臨地実習コーディネーター」及び「ボランティアコーディネーター」を配置し実施を強化する。
図1-3-2 教育方法
図1-3-3 実施体制
2)実施計画
1年目は宮古島をモデルとし、島嶼の臨地実習・演習のプログラムを開発する。2年目は、教員と実習指導者である看護職者及び島嶼住民の教育サポートを得て、プログラムを具体的に展開する。3年目は、プログラムを展開しつつ企画から実施までの総合評価を行い、取組終了後の方向性を示す。
図1-3-4 実施体制
5.評価体制
評価体制は、外部の評価委員を加えてGP推進委員会が行う。評価方法は、実習参加者にフォーカスグループインタビューを行う。また、成果指標に添って学生、大学教員、看護職者を評価する。
図1-3-5 評価体制
6.期待される効果
期待される効果として、学生は「生活者の視点」、「協働能力」、「ICT活用」を学ぶ。教員は、教育力の向上や大学の教育目標が具体的に共有できる。島嶼の看護職は、学生指導をとおして、自らの看護実践の振り返りや継続教育の機会となる。島嶼の住民は、学生教育の参加することで島嶼のストレングスに気づくと同時に学生指導に参加するという新たな役割が付加される。
図1-3-6 期待される効果
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