第1節 平成20年度の自己評価報告
1.実施体制と実施計画
GP推進委員会は、会議を定期的に開催し、学内の各チームの進捗状況や宮古島実習体制について、計画に基づき順調に進行していることを確認した。また、全教職員は、毎月の教職員連絡会議での進捗状況の報告、及び必要に応じての協力依頼により、本補助事業の取り組みの意義と計画に関する情報を共有できた。したがって、平成21年度から開始される宮古島での新しい実習教育において、学生は全学的に一貫した教育を提供され、効率的教育、質の高い教育を受けることが出来ると判断される。
2.モデル島(宮古島)での臨地実習及び指導に関するこれまでの課題等の分析と
次年度の実習及び指導計画の策定
旧教育方法による平成20年度宮古島実習に関する評価結果を踏まえ、これまでの問題点、改善点と対策が学生と看護職者両者の立場から明らかとなった。実習先へのフィードバックにより平成21年度実習計画案ならびに指導計画案が具体的に検討された。このことは実習現場での職員と大学教員が一致した指導を学生に提供する可能性を高めた。すなわち、学生は効率的、効果的に実習することができ、学生の実習成果に大きな改善が期待できる。ただし、教員からの評価が実施できなかった不利益は平成21年度実習開始までにGP教員チーム会議によりカバーしていく予定である。
3.宮古島における本補助事業推進のための体制の確立と現地スタッフの教育能力
支援事業の実施
宮古島実習のキーパーソンである実習コーディネーター、ボランティアコーディネ
ーターとして各1名の適任者が確保できた。これらコーディネーターの尽力により「宮古島実習推進会議」「宮古島実習連絡調整会議」「県立看護大学実習生受け入れのための住民ボランティア連絡会」の3つの組織が確立でき、宮古島において学生を受け入れる体制が整った。特に、住民ボランティアが組織化されたことは、学生が看護の対象となる住民の文化的背景を理解し、生活者の視点を効率的に学ぶことを可能にするとともに、学生の経済的負担の軽減につながるものである。また、宮古島における補助事業の推進のための体制の確立は、大学ならびに宮古島関係者の協働でつくられてきた。これらのプロセス自体が大学教員、現地の実習指導関係者、住民の協働能力を向上させ、学生に対して効率的に連携を学び、協働能力を育てる実習を提供できる可能性が高まった。ただし、現地スタッフに必要な研修が必要な備品納入の遅れによりできなかったので、次年度早期に予定している。
4.次年度の臨地実習及び指導計画に基づいた現地実習環境の整備
実習施設の教育環境が物的・人的に整備され、島嶼実習の課題が改善された。学生
は、ICTを活用する機会が確保されたことにより、島嶼で実習するデメリットより、ICT活用ができるという新たな能力が向上する。
5.本年度の補助事業に関する報告会ならびに評価会議の開催
補助事業の報告は、横浜での「合同フォーラム・ポスターセッション」で公表した。また、今年度の実績を自己点検評価したのち、平成20年度の報告書を作成し、看護系大学へ配付する準備が整ったことで、看護教育の中で「島嶼で学ぶ」意義を広く全国的に共有できる。報告書を用いての外部評価会議は平成21年度の予定である。これらは、本学学生が自ら受けた教育の意義と価値を客観的に理解することにもつながり、彼らの自信を育てると共に、卒業後も地域と連携し、生涯学習能力を身につけていくことにもつながると期待される。
第2節 平成21年度の自己評価報告
1.平成20年度の本プログラム成果について外部評価と全教職員対象のFD活動
外部評価会議の開催が1か月遅れた。会議欠席者は2名とも看護関係者であったので次回はきめ細かな調整が必要である。会議で成果の評価方法を予め明確にすべきとの指摘があった。GP教員チーム内に評価作業部会をつくり、学生の成果評価方法を検討し評価案は作成でき19年度実習生を対象に質問紙調査とフォーカスグループインタビューの方法を試行していたが最終案作成までには至らなかった。指摘は今年度の実施計画3で活かされた。全教職員への周知と参加は、教職員連絡会議の報告、遠隔会議システムを利用した島嶼実習風景の公開を通じてなされているが、関心の高い教員は偏っている。本補助事業以外に2つのGPプロジェクト、ならびに新カリキュラム編成作業が進行しているのでやむを得ないと考えている。
2.臨地実習教育プログラムの推進
学事歴 および時間割、シラバス、実習要項に沿って、「島嶼臨地実習モデル」型実習が着実に実施された。ただし、「島嶼臨地実習モデル」型実習について、教員間、特に担当科目のちがいによってその理解に差が生じた。これは、現場の実習指導者との話し合い前に、大学教員間の共通理解を深めるための努力不足による。また、前期実習では離島実習の学生と本島実習の学生に対するオリエンテーション(実習目標)が異なったことは反省点であり、後期からは両群に3つに視点を強調することに改めた。次年度実習の改善に向けて、今年度中に評価作業部会がまとめた資料に基づき、GP教員チーム会議で今後も十分な話し合いを重ねるとともに、次年度6月の実習開始前に実習指導者とも3つの視点について再度共通理解を一層徹底しておく必要がある。
3.住民ボランティアによる学習支援
住民ボランティアによる学習支援は活発であった。民泊は前期に最長4泊であったが、後期には11泊を希望する学生がでた。民泊ボランティアへの過度の負担という課題が懸念されるが、今後の面接・聞き取り調査等で評価し、ボランティアコーディネーターと相談しながら、長続きできるような無理のない形を大学と住民間で合意し作っていきたい。住民ボランティアの主体性を育くむためにボランティアリーダーを対象に視察や講演会を実施し、肯定的反応を得た。次年度は住民ボランティア全体の裾野をどう広げ、確たるものにしていくかが課題であり、一般ボランティアを対象とした企画も必要であろう。
4.ICTに関する教育環境の整備と活用
初年度にもかかわらず、ICT環境がよく活用されたといえる。しかし、臨地実習では主にTV会議システムが利用され、Skype、FCS、Join Meetingはほとんど利用されなかった。この課題を解決するために1,2月に臨地実習中の学生と実習指導者を対象にICT研修が企画・実施するなどすぐ対策が取られたが、その成果評価は来年度になされる。
5.臨地実習教育プログラムの評価
学生に対する評価方法は実習前に準備ができ、順調に実施されたが、教員、実習指
導者に対しては間に合わず、今年度は評価時期が各実習の直後に統一できず、前期実習分も後期に行うことになった点が大きな反省点である。これらは本補助事業の成果評価に欠かせないデータであるため、次年度の実習においても4者の評価を予定通り行うことでプログラム成果の評価に役立つデータとしたい。ボランティアに対しては年1回行うことで問題はなかったが、新しいシステム作りの時にはきめ細かく評価と改善が必要であるとの意見もあり、今後見直しが必要である。また、上記2と同様に、評価結果から「生活者の視点」に関する概念定義を明確にし、作業定義についてまず教員が統一見解を得て、学生指導にあたる必要性が示唆されたので、次年度の実習開始前に解決すべき重要な課題である。さらに、ボランティア評価結果から来年もやりたい人が17名中10名であったことから無理のない持続可能な方法を住民と大学とで十分話し合っていく必要性が示唆された。
6.宮古島実習推進委員会・実習連絡調整会議の定期的検討会の開催
今年度は実施推進委員会と実習連絡調整会議を合同で4回実施予定であるが、合同会議にするメリットもあるが、現場の臨床指導者が上司に当たる推進会議メンバーの前で自由に発言できないというデメリットもある。次年度は2回を合同会議に、他の2回を別々で行うように改めたい。2名のコーディネーターとの合同会議は実習推進に有効に機能しているが、宮古島で開催するときにはこの会議にボランティア役員も正式メンバーとして参加してもらうことが望ましい。
7.宮古島実習指導チームの教育指導能力向上のための研修会の開催
ICT関連の研修会は大学が主催することにし2回の予定で参加者を募ったところ、希望者が多数だったため、3回(1月15、29日、2月2日)実施した。しかし参加者の殆どが県立病院の職員だったので、次年度は対象の拡大、研修の時期、内容、方法等をさらに検討する必要がある。また、教育力向上研修は予定していた大学提供型ではなく合同主催型に変更したため、学内外の合意形成のために時間がかかり活動がおくれた。今年度は学内メンバーで学生の実習指導を行うPreceptor教育方法に関する 勉強会の開催に止まる予定である。
8.各種会議の開催と広報
各種会議はほぼ予定通り開催でき、それぞれの目的を果たしている。NHK(TV)への取材協力、他大学視察への協力の他、本学HPを充実している。また、3月末までには報告書を作成し広く配布することにより成果を広報、普及できる。
9.「島嶼臨地実習モデル」の他島での応用可能性に関する予備調査
当初の計画では多良間村と波照間のみの予定であったが、本モデル型実習の応用を他島で実現するには、最終年度に入ってからの検討では遅すぎるとの判断から、今年度中に本島南部以南の12離島市町村うち半数を対象に予備調査を行い、有用な結果を得た。次年度も残り半数の離島を調査し、他島での応用の道筋を探る予定である。
第3節 平成22年度の自己評価報告
1.大学と宮古病院との協働による島嶼実習指導者研修プログラムの開発と実施・ 評価
島嶼実習指導者研修プログラムの開発のための組織体制に基づき、「プログラム運営委員会」と「ワーキンググループ会議」が定期的に開催され、実習指導力の向上のための検討会がなされた。そして、情報誌「まあつき」を、ワーキンググループ会議終了後毎回発行し第16号まで発行し、病院の病棟掲示と大学の教員全体への配付を行い、情報共有が意図的に行われた。
実習指導力向上のためには、実習指導体制の整備と一人ひとりの実習指導力向上の努力が必要であることが確認され、学生実習で課題になった場面から「尊厳(倫理)を考える(3回)」、「感染管理を振り返る(3回)」、「学生指導を学ぶ(4回)」の3つの研修を企画した。それぞれの研修会が終了し、現在各グループでまとめている。
これまでの取組の成果として、次年度の学生実習に生かすために「沖縄県立宮古病院実習指導要綱」の作成に着手していること、本プログラムに特化した報告書を策せ制すること、次年度以降も大学と宮古病院との協働によるプログラムを開発し実施して行くことが決定している。
2.学生の学習支援のための住民ボランティアの主体性の推進
住民ボランティア(みゃーくの会)は、民泊ボランティア、移送ボランティア、講師ボランティアによる学生の学習支援ができるように主体的に役員定例会を開始し、学習環境を整えた。宮古島で実習した学生73名全員は住民ボランティアから支援を受けていた。
住民ボランティアは、活動に参加することの意味として、「学生との関わりは楽しく、知り会えて嬉しい」「新たな役割は自己を向上させ、やりがいになった」「地域の良さに気づき、看護大学と地域をつくる」と語っていた。本取組において住民ボランティアへの期待される効果として、新たな役割が付加され幸福感が高まることと地域のストレングスに気づき地域を誇れることであった。表現は異なるが、住民ボランティアへの期待される効果はあったといえる。
3.学内GP関連会議・宮古島実習推進会議・宮古島実習連絡調整会議・コーディネー ター会議・評価会議・報告会等の開催と広報
学部GP関連会議は、学内GP推進委員会、宮古島実習推進委員会、宮古島実習連絡調整会議、コーディネーター・学部GP教員チーム合同会議、実習評価作業部会がほぼ計画通り開催された。
3年間の取組を検証する学部GP成果報告会は、宮古島で開催(平成23年1月8日)され、153名の参加があった。参加者のアンケート調査の結果から3年間の取組は、学生の臨地実習の教育環境として宮古島は優れ人材育成につながったこと、宮古島の地域づくりに貢献したとの評価を得た。
広報活動は、日本ルーラルナーシング学会第5回学術集会で「島嶼住民が老年保健看護の臨地実習に協働で参加することの意味(第1報)−宮古島の高齢者の「住民ボランティア」活動から−」、「島嶼における大学と実習先との協働による看護職者の看護実践力向上の試み(第3報)−教員と実習指導者の協働による実習指導−」について報告した。また、地元地方紙での記事や「沖縄ジャーナル 花View2010.8.15」で、宮古島での学生実習の様子や民泊利用の紹介、学部GP成果報告会の紹介があった。
4.臨地実習教育プログラムの推進
宮古島での「島嶼臨地実習モデル」型実習の科目は計6科目で、2年次生、3年次生、4年次生で計72名の学生が保健・医療・福祉関係の8施設で実習した。評価は実習評価作業部会が、学生、実習担当教員、実習指導者、実習施設のリーダー、住民ボランティアのそれぞれについてまとめ中である。
5.他島での本実習モデルの応用可能性の調査と検討
他島での本実習モデルの応用可能性については、昨年度調査を行った。実習受け入れについての課題はあるが、学生実習を希望する小離島もあった。次年度(平成23年度)以降学部の新カリキュラムでは、宮古島と類似する規模の石垣島、小離島の伊良部島、池間島で老年保健看護実習を予定している。
6.本補助事業の総合評価と最終報告書の作成
本補助事業の総合評価は、自己評価を含めた報告書(案)を2月26日開催予定の外部評価委員会に提示し、外部評価を受け3月末日までに最終報告書を作成する。 |