島嶼看護

第V章 活動報告

 

第1節 補助事業の推進・評価体制の整備 
1.学内の補助事業の推進体制
1)全学教職員への広報活動
 本学では、教授会終了後、定例で全学教職員による「教職員連絡会議」が開催されている。学内の補助事業推進のために、10月定例教職員連絡会議で、全学教職員に本補助事業の目的および事業内容を周知し、10月以降も毎月情報共有のために同会議にて事業経過を報告している。

2)学内の本補助事業推進体制
 学内における本補助事業推進体制は、図3-1-1に示すとおり、学長を委員長として全学的に取組める組織とした。すなわち、本補助事業の推進体制は、取組を総括する「本補助事業推進委員会(以下、GP推進委員会という。委員長:野口学長)」、本補助事業の実施に取り組む組織として「GP教員チーム(取組責任者:前田学部長)」「事務局チーム(責任者:山城総務課長)」「シンポジウム作業部会(責任者:金城教授)」、自己点検評価および外部評価のために「GP評価会議」から構成した(図3-1-1)。
 「GP推進委員会」は本学の教職員管理職,取組責任者,教授,事務担当者など13名の委員で構成し、計5回の委員会を開催した。
 「GP教員チーム」は7名の委員で構成し、コーディネーターとの合同会議も含め計7回の会議を開催した。「GP教員チーム」は宮古島市関係者への本補助事業説明会、宮古島における実習支援組織作りと宮古島で開催する各種会議を主催した。また、本補助事業の成果を学生、教員、臨地実習指導者、住民それぞれの立場から評価する下部組織として6名の教員からなる「実習評価作業部会(責任者:嘉手苅教授)」を設置した(表3-4,10)。作業部会は計8回開催され、主に評価方法の検討、調査計画立案とプレテストの実施・分析までを行った。
 「GP事務局チーム」は7名で構成し,計4回の会議を開催し、主に、文部科学省、沖縄県庁との事務調整、GP教員チームへの支援を行った。

3)GP評価体制   
 補助事業の評価体制として、GP推進委員会の下で「GP評価会議」が置かれた。GP評価会議は、学内の教職員で構成する「自己点検評価会議」と外部の評価委員による「外部評価会議」を置き、外部委員(島内2名、県内2名、県外3名)を委嘱した。
平成20年度の補助事業の評価は自己評価を含む報告書を作成し、平成21年度初めに「自己点検評価会議」と「外部評価会議」を開催し、評価を受ける予定である。

図3-1-1 沖縄県立看護大学本補助事業推進体制

 

2.宮古島における補助事業の推進体制の確立
1)宮古島での推進体制 
本取組の拠点を県立宮古病院内の「沖縄県立看護大学・大学院 宮古島教室」に置き、各臨地実習施設との連携窓口をつくった。「宮古島教室」には平成20年度大学院教育改革プログラム「島嶼看護の高度実践指導者の育成」で整備したTV会議システム等も含めICT環境を整備した教室と事務室があり、嘱託職員1名が配置された。
本教室は、宮古島で実習する学生を対象とした講演・カンファレンス・勉強会、宮古島臨床指導者との会議・研修・勉強会等などで利用し、これらには県立宮古病院(本教室)以外の宮古島の各施設および本学(那覇市)にいる教員と学生も合同参加できるように計画した。また、嘱託職員は「GP事務局チーム」に属し、宮古島で開催される本補助事業関連会議等の準備、実習で使用される備品・消耗品等の管理、「宮古島臨地実習コーディネーター」、「GP教員チーム」との連絡調整などが主な業務である。

2)宮古島における本補助事業推進体制
 宮古島の推進体制確立の要として、まず「宮古島臨地実習コーディネーター」と「ボランティアコーディネーター」を各1名決定した。両コーディネーターは協力し合って、宮古島での各種会議や活動の事前調整を行うとともに、会議にも出席し、大学との連携を図りながら、あらゆる関係者のパイプ役、調整役として機能する。「宮古島臨地実習コーディネーター」には、大学と宮古島との連携を円滑に推進するために、元保健所保健師管理職で、臨地実習指導者としての経験も豊富であり、宮古島の保健医療福祉分野の関係者に強い影響力をもつ看護職者に委嘱した。「ボランティアコーディネーター」は、宮古島住民によってつくられるボランティア基盤を強化するために、宮古島のボランティア組織を育成する機能を持つ宮古島市社会福祉協議会の担当者に委嘱した。
 次に、彼らと「GP教員チーム」が協議を重ねながら、宮古島の本補助事業推進体制を指導・助言していく役割をもつ「宮古島実習推進委員会」を設置した。本委員会の委員長には、前県立宮古病院長・元保健所長で宮古島における保健医療福祉分野に影響力が大きく、本学開学時から宮古島と県立看護大学との連携に高い関心を寄せていた適任者を得ることができた。また、大学教員と宮古島臨地実習指導者が協働し、現地での学生の臨地実習が効果的に実施できるように、各実習施設に属する臨地実習指導責任者とコーディネーター2名からなる「宮古島実習調整連絡会議」も組織した。すなわち、主たる実習施設である県立病院、保健所、宮古島市保健福祉部、宮古島市社会福祉協議会の4施設においては、施設長(または/及び部長)を「宮古島実習推進委員会」委員として、実習指導責任者を「実習調整連絡会議」メンバーとして委任し、本補助事業が実質的に推進される体制を構築できた(図3-1-2)。

 

図3-1-2 宮古島における補助事業の推進体制

 

(1)宮古島実習推進委員会
宮古島実習推進委員会(恩河委員長)は、本補助事業の目的達成に向けて「GP教員チーム」及び「宮古島実習調整連絡会議」に対し指導・助言を行うことを目的とし、宮古島「宮古島実習推進委員会の運営について(申し合わせ)」(資料3-1-1)に基づき運営されている。宮古島実習推進委員会の構成員は実習施設長、保健・医療・福祉の代表者7名、ならびにコーディネーター2名、計9名であり、会議は平成20年12月と平成21年3月に2回開催された。
第1回会議の冒頭に確認されたことは本委員会の性質についてであった。本補助事業が成果を出すためには、学生の実習指導を直接担当する実務者だけでなく組織の長が本事業について理解を深め、実務者が効率的に役割を果たせるように施設が組織的にバックアップする環境を作ることが欠かせない。したがって、会議の出席はなるべく代理者ではなく、組織の長自身が出席するよう委員長から強い要望が出され、全員がその意義を確認した。次に、全委員が本補助事業の目的、内容、及び経過を正しく理解できるように、「GP教員チーム」から@「宮古島実習連絡調整会議」での討議内容、A住民ボランティア組織の準備状況、B実習コーディネーターとボランティアコーディネーターの役割、C宮古島サテライト教室の整備状況、D実習受け入れ施設、E平成21年度実習科目別学生配置及びスケジュール、F本補助事業の成果を評価する方法とスケジュール等について説明し、意見交換を行った。
第2回会議で明らかになった課題は、本補助事業における学生の学習到達目標である「生活者の視点」と「協働能力」の育成に関連して、これらの定義及びその実習方法を大学教員と現場の実習指導者が具体的に共通認識できていないことであった。これを解決するために、本学実習担当教員、「宮古島実習連絡調整会議」及び「宮古島実習推進委員会」との協議の必要性が討議され、次年度は実習開始前に、まず、大学教員間の共通認識を確認した上で、次の段階としてこれら3者が合同会議を開催し共通認識の努力をしていくことが決定された。

(2)宮古島実習連絡調整会議
 「宮古島実習連絡調整会議」は、各施設の臨地実習指導者宮古島での学生の臨地実習を効果的に実施するために、本補助事業に関する全体的課題や調整事項について意見交換または討議することを目的に設置された。構成員は宮古島における実習施設の実習指導責任者9名、実習コーディネーター、ボランティアコーディネーター、及び教員GPチームである。平成20年度の会議は宮古島において2回開催された。会議では、@本補助事業の目的と活動内容の共有、A臨地実習指導者としての教育力向上のための研修会の企画、Bこれまでの宮古島における地域保健看護実習及び老年保健看護実習の評価等次年度実習計画立案に活かしていくための取組、C実習環境の整備と備品管理の方法等を検討した。
 本会議で明らかになった課題は2点であった。第1は、平成20年度の実習評価を踏まえて、大学と臨地実習指導者が平成21年度6月から開始される臨地実習の具体的実習計画および指導方法を協力して検討し合意することであり、第2は、平成21年3月までに各実習施設の実習環境を整備することであった。

(3)実習コーディネーターとボランティアコーディネーターの配置
 大学教員と宮古島臨地実習指導者との連携を円滑に推進するために、看護の臨地実習指導者として経験豊富な看護職を「宮古島臨地実習コーディネーター」として配置した。人選にあたっては、宮古島における看護職者のリーダーとして実績があり、医療保健、福祉、教育など幅広い関係者と良好な関係を築いており、調整能力に優れている人材の中から、本補助事業の意義を理解してくれることを条件にし、適材を得た。「宮古島臨地実習コーディネーター」に期待する具体的役割は、a.GP教員チームとの連携 b.宮古島実習推進委員会開催の支援 c.学生受け入れ体制整備の支援 d.宮古島実習連絡調整会議開催の支援 e.宮古島実習指導者のための研修開催の支援 f.その他宮古島実習に関することであった。
 次に、学生の学習を側面から援助する宮古島住民ボランティアを組織するために「ボランティアコーディネーター」を配置した。ボランティアコーディネーターは、宮古島のボランティア組織を育成する機能を持つ宮古島市社会福祉協議会の担当者に委嘱した。日常的に宮古島住民と密接に関わり、地域住民や住民組織等をよく把握し、組織の立ち上げや支援活動に実績がある社会福祉協議会担当者は、我々が期待する住民ボランティア組織立ち上げに多大な貢献を果たした。ボランティアコーディネーターの役割について、a.GP教員チームとの連携 b.民泊・移送・講師ボランティアの育成 c.民泊・移送・講師ボランティアの組織化 d.学生受け入れ体制の整備支援 e.ボランティア会議の開催 f.その他、ボランティアに関することを取り決めた。「ボランティアコーディネーター」が行った主な具体的活動は、関係会議等の出席の外、看護職OB、沖縄県立看護大学卒業生・学生の父兄、民生委員など社会福祉協議会の既存の組織団体などに働きかけ、本補助事業のためのボランティア募集であった。その結果、住民ボランティア団体「沖縄県立看護大学実習生受け入れのための住民ボランティア連絡会(みゃーくの会)」が結成された。

(4)ボランティア団体「みゃーくの会」の結成
 2月に「実習生受け入れのための住民ボランティア会議」を開催し、計30名の住民が参加した。本会議では、GP教員チームが住民に対し、本補助事業概要の説明とボランティアの依頼を行い、ボランティアコーディネーターからその必要性と意義について宮古島住民の視点から補足説明があり、「民泊ボランティア」、「移送ボランティア」、「講師ボランティア」の協力要請がなされた。
 会議終了後、ボランティアコーディネーターを含め住民リーダー数名と大学教員で打ち合せを行い、その席で、住民リーダーの1人がこの企画を成功させるためには、しっかりしたボランティア団体を組織する必要性を強調した。その意見に全員一致で賛同し、次回、ボランティア団体の組織作りのための役員会開催を決め、それまでに発案者が原案作成をすることになった。
 2月26日第1回ボランティア団体役員会において、本会の名称を「沖縄県立看護大学実習生受け入れのための住民ボランティア連絡会(みゃーくの会)」とし、事務局を宮古島社会福祉協議会に置くことに決定した。「みゃーく」とは、現地の言葉で「宮古島」を意味する。さらに「みゃーくの会」の会則と組織図の原案が示され検討された(資料3-1-2)。「みゃーくの会」の目的は、会員相互及び沖縄県立看護大学との連携を密にし、大学の「島嶼環境を活かして学ぶ保健看護の教育と実践」を支援するための実習生受け入れに必要なボランティア活動を展開することである。
 ボランティア組織は宮古島在住の看護職者、県立看護大学卒業生・学生の父兄、地域住民を会員とし、大学教職員も賛助会員として登録することができるとした。本会の運営は会費(年会費1,000円)によりまかなうこととし、会員のボランティア保険加入費は大学後援会から補助してもらうこととした。そのねらいは、会費や保険料を払うことにより、住民、大学教職員、大学後援会会員などなるべく多くの人々に幅広く本事業の意義と活動に関心を寄せてもらうためである。
 平成21年2月26日現在のボランティア登録者は32人で、会長(安慶田昌宏氏)、副会長(与那覇勝子氏)の下に、「民泊ボランティア」10名(代表者 比嘉克子氏)、「移送ボランティア」13名(代表者 岸本和子氏)、「講師ボランティア」7名(代表者 島尻弘氏)を組織した。


 

 
     
     
     

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