島嶼看護

第V章 活動報告

 

第3節 「島嶼臨地実習モデル」型実習の実績
1.老年保健看護実習
 老年保健看護実習T・U・Vにおいて、平成20年度から平成22年度までの3年間継続して、宮古島において実習を展開してきた。実習先は7ヶ所で、学生の延べ数は3年間で119人であった。以下、科目ごとの実績を示す。

表3-3-1 老年保健看護実習の学生数


 

 

1)老年保健看護実習T
 20年度は1グループ(6人)、21年度と22年度は各2グループ(各6人)が、宮古島市社会福祉協議会において、生き生きデイサービスやサロンなどを利用している自立高齢者を対象に実習を行った。

(1)準備・実施状況
 準備として、20年度から、学生は高齢者との生活を体験することで、「生活者の視点」の理解が深まると捉え、民泊を積極的に推奨した。また、ほとんどの学生が宮古島を訪れるのは初体験であったため、歴史や文化などの概要が学べる講師ボランティアによる地域文化の講話への参加も促した。その結果、半数以上の学生が民泊を体験し、全学生が地域文化の講話を受講した。22年度は、宮古島や民泊・地域文化の講話のイメージがつかない学生が多かったため、前年度に撮影した写真を見せ、イメージが出来るように説明した。
 生活者の視点の学びを意識化するために、21年度からは、「実習の手引き」に“地域文化の影響”を追加し、オリエンテーションを通して説明した。オリエンテーションでは、学生が事前に宮古島の実習関係者(実習指導者、ティーチング・アシスタント、住民ボランティア)と顔合わせが可能になることや、実習関係者が学生のオリエンテーションを共有する機会になるため、ICTの活用を企画し、実習指導者にも参加を依頼した。学生には、ICTの活用ができるためのプログラムを作成し配布した。
 実習4日目の合同カンファレンスでは、大学で待機している科目責任者も加え、学生が学んだことの意味づけが出来るように企画した。
 実習最終日の報告会は、大学で学生と教員のみで行っていたが、宮古島の実習関係者との学びを共有するため、サテライト教室と大学間をICTでつなぐことを企画し、3年間継続して行った。
 実施状況として、実習前日に宮古島に入り、住民ボランティアが企画した歓迎会や「地域文化の旅(島内案内)」がある時は、学生と共に参加した。     
 学生は民泊先での体験(高齢者の生活史の聴き取りや家事など)について、学生から情報を収集し、カンファレンスで、実習目標の一つである高齢者の生活史や地域文化の影響と高齢者の身体的・精神的・社会的特徴がつながるように話題にした。実習記録に記述し、意味づけるように指導した。講師ボランティアによる地域文化の講話を受講した際には、実習中にサロンなどで出会う高齢者の語りや場面とつなげて考えるよう伝え、所感をレポートとして記述させた。
 日々のカンファレンスを通して、学生の宮古への関心や知識について把握しながら、高齢者と関わりの中で、生活や方言について、地域文化の講師ボランティアや民泊、移送ボランティアへ質問するように指導した。
 合同カンファレンスと報告会は、ICTを活用し、学生と教員に加え、実習指導者や住民ボランティアが参加することが出来、生活者の視点や協働能力の学びを強化する時間になった。特に老年保健看護実習Tは、地域の自立高齢者が対象で各地域の公民館やサロンなどに出かけるため、高齢者と地域文化のつながりが見えやすい環境にあった。

(2)学生の学びの状況
「生活者の視点」
 学生は、生き生きデイサービスやサロン、民泊先での高齢者と会話し、活動を共にする体験を通して、食事や社会参加などが高齢者の生活に密着していることに気付き、それが健康づくりにもつながっていることを学んでいた。
 例えば、@「サロン活動や畑の作業、模合いなどの社会参加の機会が多いのが、宮古の高齢者の特徴で、それが運動量の増加や隣近所の集まる機会になり、個人の健康に繋がっている」ことを学んでいた、また、A毎日農業で忙しく、自給自足の生活を営んでいると語る高齢者と関わった学生は、「この高齢者は農業をする体力があり、自立した生活を営んでいることは、ストレングスであると捉え、このストレングスを活かし続けることで、閉じこもりや認知症の予防につながる」と考察し、学びを深めていた。
「協働能力」
学生は高齢者同士やボランティア、専門職者などが、協働で高齢者をサポートしている場面に参加することで、協働の重要性や看護職者の果たすべき役割について、学んでいた。
 例えば、@「宮古島では年齢に関係なく、人と人とのつながりができている。その背景には、昔から住民同士が助け合って生活していたことが考えられる。実際に、収穫した野菜を交換し食生活を支え合ったり、老化現象が現れてきた時には、症状を友人に話すことで、共感を得て、不安を解消し、老いを自覚し合う。子や孫が就職・進学のために島を離れたり、配偶者が他界し一人暮らしになったとしても、周りの人が自分の存在意義を認めてくれるような関係が築けていれれば、孤独で寂しい思いをすることがない」と表現していた。また、A「宮古島ではつながりを通して、高齢者の一人一人が老いを自覚し、その老いを受容し適応できる能力を高め合う場面がみられた。実際に、92歳のAさんは、一番高齢であったにもかかわらず、周りの人達と打ち解け、楽しくしたり、リーダー的な存在になっていた。Aさんが世代に関係なく、生き生きとしているのは、同じ地域で育ってきた仲間は、“みんな友人である”という考えを持っているためである。またAさんの住む地域では過疎化が進み一人暮らしの高齢者は珍しくないため、お互いがお互いを心配し合っている関係があることがわかった」と、学びを表現していた。
「ICT活用」
 学生は、ICTでつないだ合同カンファレンスや報告会に参加し、高齢者の生活と健康のつながりや、人と人とのつながりの強さなどについて、実習における具体的な場面を通して報告していた。それに対して、宮古島の実習指導者や住民ボランティアから、同時進行で助言をもらうことが出来、生活者の視点や協働の重要性に関する学びを強化することが出来ていた。

(3)課題
 自立した高齢者が対象で、毎日各地域に出かけるため、教員主導の指導ではなく、宮古島在住のティーチング・アシスタントや実習指導者、退職看護職を効果的に活用する工夫改善が必要である。

 

2)老年保健看護実習U
 平成20年度は3グループ(15人)、21年度と22年度は、各4グループ(21〜22人)が、県立宮古病院(整形外科、内科病棟)や、国立療養所宮古南静園、介護老人福祉施設しもじ長生園において、入院・入所している要介護高齢者を対象に実習を行った。

(1)準備・実施状況
 平成20年度から準備してきたことは、生活者の視点や協働能力を強化するために、実習目標に“地域文化の影響”を追加したことや、学生にはオリテンテーションなどを通して、住民ボランティアによる民泊や講話を勧めた。また、21年度は治療・療養上における高齢者の特徴やケアの工夫についての看護実践の体験について、講師ボランティアに語ってもらう場を企画し調整した。
 ICT活用を使った準備として、毎年、実習指導者を対象として、学生のオリエンテーションや合同カンファレンス、報告会への参加の調整、老年保健看護ダイジェスト版の講義を行った。 
 準備における最大の特徴は、22年度から県立宮古病院と大学とで実習指導力向上を目的に協働プログラムを立ち上げ、実習前に準備出来たことである。その中で、「実習指導要領」を作成し、役割分担などを決めた上で、実習に臨むことが出来たことである。その際、ICTがあることで、会議や調整などの準備も円滑に行うことが出来た。
 実施したこととして、宮古島の歴史・文化や、語られた看護実践は、高齢者が地域の暮らしや文化・歴史を土台として治療・療養していることを学ぶ機会になっていた。例えば、同じ病室で高齢者同士が知り合いだったり、面会に訪れる人が共通の知人・友人だったりすることから、学生は、それを宮古島の人々のつながりの強さだと捉え、それを活かしたケアとして、住んでいる地域ごとに病室を分けたり、リハビリ時間を調整したり、病棟内の共同スペースを活用して地域ごとのサロンを開いたり、退院に向けてケアを継続するために介護などの教育で退職看護職を活用するなどを提案していた。
サテライト教室において、学生は文献検索を通して、担当事例を理解するために必要な疾患の病態生理や薬剤などの情報をタイムリーに調べていた。
 合同カンファレンスでは、ICTを活用することで、大学の科目責任者らが加わることが可能になり、直接担当した実習指導教員では気づかない視点からの助言があったため、学生にとって学びを強化する機会になっていた。また、報告会に実習指導者や住民ボランティアが参加することが可能になった。特に住民ボランティアから、学生は新鮮な目を持っていることの気づきや、治療優先で生活者の視点を忘れがちな病院の実情に対して、率直な意見が聞かれたことは有意義であった。

(2)学生の学びの状況
「生活者の視点」
 学生は、高齢者や家族、友人などの人との関わりを通して、宮古の特性である農業や伝統行事、方言などから、生活者の視点を学び、それを活かした看護実践に取組んでいた。
 例えば、@民泊先での体験(畑の朝取り野菜をいただく)や、教えてもらったこと(踊り:クイチャー)を担当事例の支援に役立てようとしていた。また、A入院中に家族だけでなく、親戚や友人、隣近所など多くの見舞客が面会に来ているに気付き、入院中であっても生活と繋がっていることを学んでいた。B高齢者同士が方言で楽しそうに語り合う場面を観察し、共通の言語(方言)でのコミュニケーションの重要性を学んでいた。
「協働能力」
 専門職者などのフォーマル・サポートに加えて、インフォーマル・サポート(家族、隣近所など)の協働の重要性について学んでいた。例えば、@小離島出身の入院中の担当事例に、その小離島から毎日面会に来る家族への支援を導き、面会の工夫や家族の健康管理のための社会資源の活用について、実習指導者や教員と検討していた。A報告会に住民ボランティアが参加したことで、住民の視点で実習先に意見する場面を共有し、ケアの改善や高齢者のQOL向上には、専門職者だけでなく、住民も含めて多様な人々との協働が必要であることを学んでいた。
「ICT活用」
 学生は、合同カンファレンスや報告会を通して、同時進行で大学(または宮古島のサテライト教室)にいる科目責任者や実習指導者から助言を得たり、討議をすることが出来た。そのため、学生は報告した生活ニーズへの着目や、地域連携室などで学んだ協働についての学びが強化されていた。
 参加した住民ボランティアから、学生は新鮮な目を持っていることの気づきや、治療が優先しがちで生活者の視点を忘れがちな病院の実情に対して、率直な意見が聞かれたため、実習に関わった全員がICTを活用して、共有することが出来た。また、22年度には、学生が担当した高齢者が報告会にも参加することで、当事者から直接意見や施設での状況について、参加者全員で共有する機会になった。     
 学生からは、ICTを活用した報告会に参加することで、@「宮古島の関係者と学びを共有出来たことで、学びが深まったこと」や、A宮古島の実習指導者から、「お互いに学ぶことが出来、学生の若い意見を聞くことが出来て良かったとのコメントをもらったことで、私達学生の学びが実習指導者に影響を与えたり、相互に良い方向へと結びつけているということを感じとることができて良かった」の意見があった。

(3)課題
 ICTを活用することによって、遠隔であっても、実習に関わる多くの人々が情報を共有することが可能で、学生の実習環境を整えることが出来ることがわかった。4年目に向け、さらに教育方法を工夫改善し、個別や集団の指導でICTの活用を検討していく必要がある。
 実習指導力向上のための県立宮古病院と大学との協働プログラムは、1年間の活動を終え、2年目を迎えるため、役割分担などを明確にし、協働での実習指導を発展させていく必要がある。

 

3)老年保健看護実習V
 20年度から毎年2グループが、居宅介護支援事業所てぃだと訪問看護ステーションみやこにおいて、在宅で療養生活を送っている要介護高齢者を対象に実習を行った。

(1)準備・実施状況
 準備として、生活者の視点や協働能力が意識化できるように、21年度から「実習の手引き」に、「地域文化」や「協働・連携」を追加した。 老年保健看護実習T・Uと同様に、オリエンテーションを通して、住民ボランティアによる民泊や地域文化の講話を受講するように勧めた。合同カンファレンスや報告会は、実習T・Uに続いてICTを活用して、実習指導者や住民ボランティアが参加出来るように企画し、「実習の手引き」にも明記した。  
 実施として、生活者の視点について、実習記録の記述やカンファレンスにおいて、関連した発言や記録があった場合には、意図的に取り上げて学生間で話題にした。特に宮古島の場合は、インフォーマル・サポート(家族、隣近所、友人等)が強いことに特徴があるため、それについての気づきがあった場合は、意図的に事例のアセスメントやケアにつながるように指導した。
 協働の実際を学習させるために、実習指導者と調整して、サービス担当者会議や、病院・在宅での退院調整などに同行できるように計画し、学生に提案した。訪問看護師の役割の実際を学習させるために、担当事例以外の訪問看護に同行できるように、訪問看護ステーション長と調整した。
 合同カンファレンスにおいて、学生の報告や実習指導者の助言を得た後、学びの効果を深めるために、ICTを通して大学で参加していた科目責任者の助言を得た。担当事例の疾患や薬剤などの情報について、準備されている実習図書では足りなかったため、サテライト教室の利用を学生に提案し、インターネットの活用や教室内に保管されている文献の借用を行った。また、学生より記録の整理のために希望のあった実習用パソコンの貸し出しを行った。
 学内実習(第1週目の看護計画の演習)は、ICTを利用したことで、宮古島の1グループだけでなく、本島のグループとデスカッションが出来、学習の広がりが出来たと思われる。合同カンファレンスは、ICTを利用したことで、大学の科目担当教員や他の実習指導教員より助言を得る機会があり、学生の学びが深まった。
実習最終日の報告会では、ICTを活用したことで、ボランティアや実習指導者から、改善点や良かった点など具体的な意見があったことから、学生の学びには効果があったと思われる。

(2)学生の学びの状況
「生活者の視点」
 学生は、担当事例や家族、友人・知人、専門職者などからの情報収集に加えて、地域文化の講話で得られた宮古島の歴史・文化などの知識を統合させた上で、生活者の視点を捉え、看護計画や実践に活かす試みをしていた。
 例えば、@高齢者の尊厳を支えるケアとして、高齢者が大切にし誇りに思っている地域に伝わる古謡を、家族や専門職者が大事にし、ケアを継続することで、高齢者の生活や人生が連続することが可能になり、要介護5であっても、尊厳を支えるケアが出来ることを学んでいた。また、A要介護高齢者の夫を支える主介護者(妻)との関わりから、病院では生命を救うことを第一として、身体上の問題が優先されるが、在宅では必ずしもそうではない。主介護者が体調を崩したり、介護へのモチベーションが下がるなど、主介護者が崩れると、在宅生活の継続が困難になるため、主介護者の存在が重要であることを学んでいた。
「協働能力」
 学生は実習指導者に同行し、高齢者との関わりを見学し、情報収集を行うことで、専門職同士や家族、隣近所などとの協働についての実際を学んでいた。
 例えば、@事例の現在の介護状況から必要な本人のニーズは何かをアセスメントし、介護保険などの社会資源につなげていた。事例との関係が密で、要望を実習指導者に伝えることで、事例が生活しやすい環境をつくれるため、日常から何でも話し合える関係づくりが重要だということを学んでいた。また、事例が利用している様々なサービス機関に連絡を取っている場面を見て、実習指導者は多くの専門職種やサービス機関と連携を取って調整していることが、実際に見ることで理解が深まっていた。A失語症がある事例を担当した学生は、事例は返答するまでに時間がかかってしまい、家族や専門職者がそれを待っていないことが、コミュニケーションの機会を取れなくさせてしまっているのではないかとアセスメントし、家族や専門職者に待つことを意識化させ、協働することで継続可能な計画を立案し実施していた。
「ICT活用」
 学生は1週目の学内実習(看護計画の演習)や合同カンファレンス、報告会を通して、ICTの活用(テレビ会議)の実際を体験した。また、サテライト教室にある文献検索やインターネット環境を活用して、疾患や看護過程などについての情報収集を行っていた。
 例えば、@統合失調症や幻聴の軽減のための看護について、文献検索を行い、必要な情報を取り寄せていた。A合同カンファレンスでは、主介護者に焦点を当てて報告した学生に対し、在宅生活を継続していくためには、要介護者を支える主介護者の存在が重要であり、主介護者などのニーズの確認や、介護力を支えるための支援が必要であることを助言したことで、学生は自らの学びを深めていた。
 最終日の報告会では、宮古島でICTを通して参加していた住民ボランティアから、「学生は感覚的ではなく、根拠を持って考えながら取り組んでいることや、高齢者の日々の暮らしに目的意識をもたらす関わりをしていることが伝わる」という意見が聞かれ、学生は報告したことの意味を深めていた。また、ICTが活用できることにより、22年度は老年保健看護実習U(県立宮古病院)の実習指導者が実習Vの報告会に参加することが出来た。 

(3)課題
 老年保健看護実習T・Uと同様に、教員が付きっきりで指導を行い、ティーチング・アシスタントや実習指導者、退職看護職の活用について、事前の準備や調整を踏まえて、ICTの活用を積極的に行いながら、教員はポイントのみ宮古島で指導可能な方法の検討していくことが必要である。

 

2.成人保健看護実習U  
 成人保健看護実習Uの実習においては、慢性の経過をたどる成人期特有の健康障害のある患者を受け持ち、実践に必要な知識・技術・態度を習得することを目的に、5つの目標を掲げて医療機関で3週間2クールの臨地実習を行っている。平成21年度から本島内3つの医療機関に宮古病院での実習が加わり慢性疾患患者が入院する病棟、リハビリ室および透析室で実習を行ってきた。宮古病院での実習は、21年度は1クール3週間、5名の学生、22年度は2クール6週間、1グループ6名の2グループ合計12名の学生が全て3B病棟において展開された(表3-3-2)。

 

表3-3-2 成人保健看護実習の学生数


年次

科目名

実習先名称

年度別学生数(人)

延べ数
(人)

21年度

22年度

3年

成人保健看護実習U

県立宮古病院   3B病棟

5

12

17


 

(1)準備・実施状況
 宮古島の実習は21年度、22年度と2年間継続して行われ、学生に対しては、全体オリエンテーションでの本科目の実習目的・目標の説明の他に、宮古島実習独自のプログラムや移動手段、宿泊施設の案内、ボランティアの活用法、すなわち宮古島での特別企画である@講師ボランティアによるミニ講義、民泊案内、実習先への学生の移送、ボランティアとの交流、A宮古島サテライト教室の学習環境やICTの活用についてなどの説明を行った(図 3-3-1)。21年度は、教師自身イメージがつかず、学生と一緒に突き進んだが、22年度は、21年度の経験などを話して、また宮古の地理、宿、交通機関などについてもイメージできるように説明した。
 ICT活用に関しては、他領域との調整など前もってスケジュール案を情報管理室に提出した。
 計画に加えて、GPプログラムの理解を深めるために、実習てびきに本プログラムの目標について記載した(表 3-3-3)。
 実習を始めるにあたって21年度は、指導教員も宮古病院の環境や入院患者の状況の把握に時間を要した。受け入れ病棟の師長とスタッフの数人は、本島での学生実習を経験していたものの、成人保健看護実習の内容に関しては全く始めてという指導体制であった。本島の医療機関での実習では、事前に施設の看護部および病棟実習指導者と師長に実習の説明を行ってきている。しかし宮古島の実習に先立ち教員は、病棟の研修を兼ねながら実習環境のアセスメントや入院患者の選定、また病棟実習指導者と調整を十分に行った。そればかりでなく宮古島実習では、成人保健看護実習Uの目的・目標と共にGPプログラムの目標との関連やそのための実習の進め方などについて説明する必要があり、科目担当教員、実習担当教員は、病棟師長、主任、実習指導ナースへ説明会を行い、実習を展開していった。しかし21年度の実習後の反省では、病棟側からの要望や教員側からの反省では、実習自体の展開や学生との関わり方に双方とも満足するものではなかった。また実習環境の調整についても、1年目に経験して始めて具体的な話し合いが行われ、双方での確認と相互理解を深める必要があった。これらは、教員との現地での話合いのみでなく、「実習指導力向上のための協働プログラム」の中でICTを用いた大学、施設のカンファレンスが開催され、双方向の意見交換や情報の共有化が21年度より22年度は多く行われた。また情報共有のための実施要項の作成、実施、課題の整理が行われている。教員の方は、患者選定基準や実習指導者と実習担当教員の役割分担を明記した調整事項を準備した。実習の展開では、看護過程、看護診断、関連図を用いたケースカンファレンスなどを取り入れており、実習学生の記録用紙の形態にスタッフが不慣れだったため、大学側に病棟から学習会の要望が強く出た。それに対して、22年度はオリエンテーションで説明を試みたが、スタッフ全員に行ったわけではなかったので、十分ではなかったようである。今後、大学側も記録に関する見直しを検討していく必要がある。

実習の進め方(宮古島)
1−1)実 習 日 程

< 前半(第 グループ)日程 >


 

< 後半(第 グループ)日程 >


図3-3-1 宮古島実習の日程・進め方および計画

 

 実習支援体制は、ボランティアコーディネーターと連携して整えた。ボランティアの活用では、講師ボランティアが、1クールと2クール2回の宮古の歴史、方言講座が行われた。方言講座ではミニ劇により、わかりやすく工夫されていた。元看護職の方々が参加しており、看護についての心得などアドバイスなど講座が終わった後も看護の先輩達と学生との交流が行われた。

3-3-3

質の高い大学教育推進プログラム(GP)
島嶼環境を活かして学ぶ保健看護の教育実践
−生活者の視点と協働能力を育む体系的な臨地実習−

目標
1島嶼で慢性病を持ちながら生活する人の暮らしを理解する。
1)講師ボランティアによるミニ講義をとおして、
@その背景となる歴史に触れる(史跡巡りを含む)。 
A慢性病をもって療養する人の特徴を把握する。
2)民泊ボランティアを利用し、島嶼で生活する人の暮らしを体験 する。

2 島嶼で慢性病を持ちながら療養する人の支援のための協働・連携を理解する。
1)在宅支援に向けた病棟、地域連携室、外来における協働・連携を学習する。
2)病院内における多職種との協働・連携を学習する。
3)病院内で行われている地域連携協議会、在宅支援介護連絡会などに参加し地域との協働連携を学習する。
4)透析患者、HOT患者の台風対策における協働・連携について学習する。
3 ICTを利用し、ICT活用能力を養う。
1)県立看護大学附属図書館につなぎ、文献検索を行う。
2)大学と宮古島サテライトをつなぎ、他グループとの合同カンファレンスを行う。
3)大学と宮古島サテライトをつなぎ、グループカンファレンス、病棟報告会に大 学からも参加する。

 

 宮古島滞在中の移送に関しては、学生の母親が車を借りて朝夕の送迎や食事の準備など物心両面の支援があった。また、担当した患者さんの住む池間島の生活を理解するために、人々が集会する場所の見学をボランティアの島尻さんにお願いをしたところ、快く協力が得られた。病院までの送迎や歓迎夕食会など、ボランティアの方々の支援をしていきたいという気持ちがよく伝わった。

(2)学生の学びの状況
「生活者の視点」
 本実習の目的は、慢性疾患を有する患者の看護の実践に必要な知識・技術・態度を学習することであり、その目標達成には、病態像や治療に加え、患者の生活を理解し、その人に合った療養のセルフケアができるための支援について学ぶことである。その学びには生活者の視点が不可欠である。21年度は、実習終了後のフォーカスグループインタビューなどより、宮古島と本島の学生との差を見つけることができなかった。しかし22年度学生には、記録上生活者の視点に関する記事を意識的に記載するように求めたところ、宮古島の患者さんが、学生を快く受け入れてくれ、宮古島の気質や風土に触れることが、率直に話してくれる患者さんからさまざまな島の生活者を理解していた。入退院を繰り返してコントロールが安定しない糖尿病の患者さんのアルコールと低血糖との関連や、脳梗塞で片麻痺の障害を抱えた一人暮らしの患者さんの退院調整、間質性肺炎から酸素療法導入への意思決定の支援、COPD急性増悪による入院中の気管切開、酸素療法、気管支拡張薬、去痰薬を用いた気道浄化などの治療中にどうしても法事のために外出したいという希望への援助など学生は慢性期の看護についての目標を達成し、退院後のその人の生活背景まで把握したケアを実習期間中に学習することができた。また地域連携室の役割を学びつつ、生活の場に戻るための支援に参加することができた。リハビリ室での見学実習では、「宮古病院のリハビリ室での実習では、離島の病院の特徴を学ぶことができた。宮古病院は急性期病院ではあるが、宮古島には医療施設が限られているため、急性期・慢性期・回復期の区別がなく、様々な健康レベルにある患者が一緒にリハビリを行っている。また、退院先は自宅退院が73%と非常に高いことも特徴である。これは、家族との同居が多く自宅での介護力が強いという地域性も関係しているようだ。」という学生のリハビリ室ルポからも離島病院の特徴とともに生活者の視点が捉えられている。
 「入院前に畑やグランドゴルフ、家事等を行っていた人が多いため、体を動かす生活が90代であろうが年齢の関係のない生活環境であり、早く元の生活に戻りたいという本人の意識が意欲を高めることに繋がっている」などの学生の記録にも生活者の視点が捉えられているといえる。

「協働能力」
 慢性疾患を有し療養する人のための支援には、宮古島病院の地域連携室の担当者の前川さんより在宅支援に向けた協働・連携の取り組みについて説明を受けた。
 「宮古島は他病院やクリニック、その他医療、福祉施設だけでなく、消防や行政などの社会資源がうまく連携がとれているという話や、患者の介護をする家族の看護力も高いという話を聞いて、宮古病院の自宅退院が多い理由がいくつか学べたことはよかったと感じた。」という記録から施設間、関係職種、家族の繋がりに関する情報が得られている。
 「リハビリ外来では、障害者手帳を持っていて地域のサービスを受けられるのに、そのことを知らない患者さんがいて、そのような損を被らないように、社会資源サービスを紹介し、地域連携室と連携して患者さんをサポートできるように、医療福祉サービスを把握し、地域で協力していけるような知識が必要だと理解した。」これは、リハビリ外来の様子から、診察医師と患者さんのコミュニケーションから学べたことを記録している。また「他の病院から転院してきた患者さんや担当以外の患者さんの把握のために、パソコンでシャントの写真や患者の状態を情報共有することにより、合併症や医療事故を防ぐことなど、透析室の看護師として十分な知識と態度、熟練した技術が必要だとわかった」など宮古島の医療機関の連携がここでもとらえられている。

「ICT活用」
 学生は、昨年の実習後に提案されたカラーコピー機が設置されたため、指導案作成に活用された。昨年同様に本島内の実習グループ交流もあったが、盛り上がりに欠け、交流に関しては双方の会議運営が課題といえる。報告会に関しては、病院側の指導者と大学側の指導者を交えた会議が開催され、まとめがきちんと行われた。テレビ会議システムは、徐々に双方向の壁を取り払う効果を果たしつつあると感じられる。

(3)課題
 成人保健看護Uの慢性期の学習環境は、宮古病院2B病棟に協力してもらい、2年目の本年度はほぼ問題はなかった。しかし指導に関わったスタッフからは、学生のカンファレンス資料の関連図に関する説明の要望により実習前の学習会の開催などを企画したが、十分な理解にはつながっていない。しかし病棟スタッフは、学生の記録の全体像を把握したいという要望や、スタッフがどのように学生の記録を指導に活用していくかなど自己の課題としている。また実習中、病棟スタッフからは学生へのコメント内容が適切であったか、教員への確認などがあり、学生実習を受け入れて看護専門職者としての自覚が高まっているのではないかと考えられる。
 臨床技術の体験に関しては、バイタル測定や見方についての指導や受け持ち患者の中には感染症のケースもおり、感染防御策を学生がしっかり身につけていくことが必要である。感染症についてスタンダードプリコーションを病棟ならびに学生が徹底していくことが必要である。
 2クール目の実習においては1クールでの課題を受けて、看護計画を用いて朝の報告が行われており、それが午後の振り返りにも活かされているなど徐々に指導体制は向上している。
これらの実習体制、指導力に関する課題は、今後の指導力向上のためのスタッフ教育プログラムの具体的な内容として明らかになってきた。
 支援体制に関しては、3週間の実習期間中の安全な宿泊施設の確保がされないことは、学生・教員共に危惧するところである。移送に関しても宮古島の学生の親の負担が強くならないようにする配慮が必要である。

 

3.地域保健看護実習
 平成21・22年度は、4年次後期に、それぞれ学生8人が宮古福祉保健所(1〜3人)、
宮古島市役所(5〜7人)において多様なヘルスニーズを持つ住民の個人・家族、集団に対する保健指導の方法を習得し、地域のケアシステムを活用して健康課題を解決する方法について実習を行った。
 実習初日に、オリエンテーション(保健所または、市町村の組織、業務)の説明を受ける。2日目以降より、保健事業(家庭訪問・事例検討会、健康教育、等)の実習を行い、終了日に臨地報告会で学びを深めた。平成22年度は、保健所で実習(10日間)を行った学生は、さらに市町村の地域包括支援センターにおいて2日間、当センターの役割・業務について実習を行った。

(1)準備・実施状況
 準備として、学生に対して「生活者の視点」、「協働能力」の理解を深めるために、@3年次後期の講義(地域保健看護方法U:健康危機管理)について想起し学習を深める。A既存資料「地域の力を生かした災害対策 トライアスロン大会と台風を利用して」「家庭訪問を重視した保健師活動」「新任期の家庭訪問 保健師だからこそできること」を配布し、既習の講義と関連づけて思考する。また、実習中に家庭訪問の受け持ち事例、健康教育のテーマに関連する文献検索ができるように宮古病院サテライト所蔵の図書一覧を配布し活用を促した。実習日誌へ「生活者の視点」「協働能力」「ICT活用」について記載しやすいように具体例を記入した様式を配布した。また、現地のボランティアの講話、民泊より島の歴史や文化を理解することで宮古島の住民および宮古島全体の理解に繋がるよい機会であることを説明し参加を促した。
 実習担当者に対して実習計画へ「協働能力」「生活者の視点」を意図して健康危機管理システムとして宮古島トライアスロンでの島の協働を活かした事例として講義「台風14号災害対策」および事例紹介「担当保健師の長期継続事例への支援」を新たに行うことを調整した。
 実施については、各グループへ3回巡回指導を行った。指導内容は、1回目:各学生の家庭訪問受け持ち事例のアセスメント、課題の抽出、訪問計画立案への助言など、2回目:事例検討会(各事例の討議課題への助言・担当保健師の長期継続事例への支援の解釈)、3回目:臨地実習報告会(実習の学びへの助言)の中で生活者の視点、協働能力についての気づきを促した。上記の担当保健師との調整内容も実習計画に組入れスムーズに展開することができた。また、島での保健師活動経験のあるTAを配置したことで学生は、タイムリーに指導助言を受けることができた。

(2)学生の学びの状況
「生活者の視点」
 保健所での実習は、家庭訪問の見学・実施(未熟児、特定疾患、精神、結核)、健康教育の実施(難病)、結核診療、感染症・精神保健などの保健事業オリエンテーションなどの対人サービスの場において対象者および保健所管内の現状より生活者の視点を学んでいた。「台風14号災害対策」を受講して平成21年度の学生は、生活者の視点の学びの記述があったが、平成22年度はみられなかった。
 市町村での実習は、受け持ち事例の家庭訪問を通して生活者の視点をアセスメントに活かし訪問計画を立案、実施した。健康診査、健康相談、健康教育の見学・実施、各保健事業のオリエンテーション及び島の地区踏査などの場面においても直接住民の声を聴く、住民の生活を観ることや保健師の説明などから生活者の視点を学んでいた。担当保健師の事例紹介「長期継続事例への支援」からは、対象者の思いの引き出し方、対象児の成長や生活の変化に対応した保健師の支援内容の変化を学んでいた。また、学生は事前学習に加え、初日の講話ボランティアの方より島の歴史や文化に関する講義を受講したことで地域住民や宮古島全体が捉え易く、理解が深まっていた。
「協働能力」
 保健所での実習では、所内、母子保健オリエンテーション、障害児歯科作業部会、エイズ協議会への参加、担当保健師の事例紹介「長期継続事例への支援」から他機関との連携調整の現状とケース支援に対する関係者との連携の重要性を学んだ。「台風14号災害対策」の講義では、宮古島トライアスロンの経緯を踏まえ災害医療3要素(情報・人・物)があり日頃からのネットワーク構築が生かされていることを学んでいた。
 市町村での実習では、健康診査、ケース会議、食育推進計画策定会議、思春期関係者会議、事例検討会、家庭訪問の場面より関係機関の情報交換、情報の共有化、役割分担、などを学んでいた。特に、事例検討会後では、指導保健師の「長期継続事例への支援」では、長期に関わっている多問題の事例への支援を紹介しその事例を通して多職種連携による支援の必要性を痛感していた。「思春期関係者会議」「食育推進計画策定会議」では、地域の児童・生徒の育成、島の肥満の現状を踏まえた食育の重要性を認識し課題解決に向けて多職種との連携を行うことの大切さを認識していた。
「ICT活用能力」
 サテライト(ICT)の活用は、平成21年度においては保健所での報告会当日、教員は、本島の保健所の実習報告会へ参加しており活用は不可能であった。但し、携帯電話での進捗状況の確認、レポートの記載内容などの指導を行った。平成22年度は、指導保健師、学生のサテライトへの移動への負担があり特に、サテライトでの報告会を実施しなかった。平成21年度は、実習2日目に遠隔で受け持ち事例の訪問計画について指導を行った。その際、画面越しに直接アドバイスや指導を受けたことを実際に訪問計画に反映でき、実習に反映できたとの学びが記述されていた。しかし、実習時間外に実施した為、負担がかかった、マイクを通しての指導に違和感があったとの意見もあった。

(3)成果と課題
 地域保健看護実習は、個人・家族、地域の健康増進・健康問題への支援を実習の主としており、個人・家族、地域(歴史・文化などの地域特性を踏まえた生活者の視点)を公衆衛生的見地から理解することが前提である。
 保健師活動そのものが対人保健サービスであることより事業内容も必然的に生活者の視点や、協働能力を理解できる場面は多いと考える。しかし、今回特に健康危機管理の「台風14号災害対策」の講義より生活者の視点、協働能力の視点が具体的に記述し理解していることより災害時の生活者として宮古島の住民の逞しさや協働能力を総合的に学ばせるよい教材だと考える。
 また、市町村保健事業(家庭訪問、健康相談、健康教育、健康診査、地区組織育成、会議)の実施、見学を通して生活者の視点、協働能力を理解させることは可能である。特に、家庭訪問事例を生活者の視点からアセスメントを行い、訪問計画を立て実施する。可能な限り個人・家族の健康課題を解決する上で他機関との連携の必要な事例を提供し実際に調整・連携を体験させること等の事前調整をおこなった。その中で、実習調整担当保健師より事例検討会の持ち方について提案があった。学生の家庭訪問事例検討終了後に、指導保健師が長期に支援した事例を提供することで生活者の視点、協働能力を深めることができるとのことで実際、事例検討会で展開した。指導保健師の事例紹介より長いスパンの中での対象者の健康問題、生活実態の変化、それに伴う多職職種の協働による支援のあり方がより理解できた。
 以上のことより、宮古島のトライアスロンのネットワークをベースにした健康危機管理「台風14号災害対策」の講義、現場で中長期的に関わり健康問題が改善した訪問事例の紹介は、より深く生活者の視点、協働能力を学ぶ教材であり、教育方法だと考える。
 また、実習指導体制として、2ヵ年間、宮古島在住による保健師経験のあるTAを起用した。これまで実習期間中に宮古島に赴いて担当教員による学生指導を行う回数は、2から3回であったため、タイムリーな指導ができなかった。TAの島での巡回指導により生活者の視点、協働能力を踏まえ島の住民の健康課題、保健師活動をイメージがより具体的になったと考える。
 今後の課題としては、島(宮古島の住民)をより身近に感じ、住民の生活を直に感じることができるように地区踏査を徒歩、車などで行うプログラムを実習計画に入れる必要がある。また、TAと担当教員、担当保健師の役割を明確にし、連携を強化し遠隔地における効果的な実習指導ができるように実習指導体制の構築が望まれる。

 

4.統合実習
 統合実習(1単位、5日間)は、学部教育における最後の実習である。学生は、それまでの領域別の学習、実習経験から導かれた個々の課題に対して、主体的な実習場の選択、実習計画、実習調整を行い、実習を実施する。実施においては、個々の学生が現場の実習指導者と調整しながら行なう。この実習での教員の役割は、実習計画の立案指導と実習先との初期の連絡調整、および実習中の学生へアドバイスであり、現場に出向いての直接の実習指導は行なわない。
 宮古島での実習は、平成21年度は4年次78名中の8名、平成22年度は78名中の7名であり、領域は老年保健看護及び島嶼保健看護であった。実習先は宮古病院、宮古島社会福祉協議会、訪問看護ステーション、居宅介護事業所であり、宮古島実習の学生は、個々に課題内容は異なるが、宮古島の人と人のつながりや協働連携の良さを活かして課題に取り組んでいた(表3-3-3)。 

表3-3-4 宮古島統合実習 実習施設名および学生

 

(1)準備・実施状況
実習先との連絡調整においては、宮古島での実習希望学生が決定した時点で、教員が実習先と連絡を取り、GPの3つの視点に沿った統合実習を行なうことを説明した。
実習調整では、宮古島教室と大学ICTを結び、学生と実習指導者が直接実習調整を行なった。ICTによる調整後は、学生と実習指導者が電話や電子メールで連絡を取り合い、実習の準備を行なった。
実習中は、ICT上で、学生・指導教員のミーティングを1度行ない、宮古島の学生からの相談を教員が本学で受け、アドバイスを行なった。学生は、実習指導者と連絡調整を行ないながら、課題の達成に向けて実習を行なった。ICTの活用により、従来の沖縄本島内の実習よりも丁寧な実習支援体制がとれたと考えている。
生活者の視点の理解を促すために、講師ボランティアによる「宮古島の歴史と文化」の実習初日の実施を依頼した。また、民泊先との積極的な交流により宮古島での生活を体験するなど、ボランティアの活用を行なった。実習先以外での見学、情報収集では、ボランティアコーディネーターに依頼して連携をとってもらうなどで対応することができ、宮古島の協働連携の良さを活かした実習を行うことができた。
実習最終日に宮古島教室と大学をICTで結んで行なった実習報告会では、宮古島教室からは学生、実習指導者および住民ボランティアが参加し、看護大側からは実習担当教員が参加した。専門職の視点に加えて、ケアを受ける住民の視点で対象者の気持ちの代弁など学生への貴重なアドバイスが得られた。    
(2)学生の学びの状況
「生活者の視点」
学生は、「宮古島の歴史と文化」の講義内容を対象者とのコミュニケーションに活かすことができていた。対象者とのコミュニケーションが深まり、人と人との繋がりの深さを感じた学生は、自己の課題への取組みの中で、多くの学びをしていた。例としては、@「地域性」を学ぶことを目標にした学生は、地域の高齢者同士の繋がりが高齢者が生活していく上で不可欠のものであることが理解できたと述べていた。A入院患者のQOLを高めるケアを学ぶことを目標とした学生は、病棟のデイルームを活用した患者同士の交流の場を設けることを提案していた。B在宅高齢者のQOL を高めるための看護援助を考えることを目標にした学生は、地域ごとに伝わる伝統文化を皆で楽しむことが、地域の人と人とのつながりを深くすることを学んでいた。
「協働能力」
学生は、宮古島の協働連携の実際から対象者のニーズ把握とニーズ充足への対応には、関係機関および住民との連携が重要であることを学んでいた。例としては、@地域における障害児および家族へのケアを学ぶことを目標とした学生は、成長発達する障害児の変化するニーズに合わせたケアと、ケアを行なうための協働の実際と重要性を学んでいた。A地域連携室の機能を学ぶことを目標にした学生は、沖縄本島の病院との転院や退院の調整における連携内容が、家族介護力によって影響を受けていることから、対象者のニーズに合わせた協働連携の必要性を学んでいた。B介護予防における看護の役割について理解を深めることを目標にした学生は、地域における高齢者の見守り活動を行なう民生委員の話を聞く体験から、対象者理解のためには、地域における住民と専門職の連携が重要であることを学んでいた。

(3)課題
 平成21年度実習において、現在実習中に行なっている講師ボランティアによる講話を、実習前に大学内でICTを活用して行い、学生自身にも文献を調べてもらうことで主体的態度の育成を促すことを検討することが課題となった。しかし、平成22年度実習では、宮古島の文化・歴史についての事前の学習を行えた学生は一部であり、ICTによる大学内での講師ボランティアの講義を行うこともできなかった。学生の主体的学習を促進する実習支援体制については今後の課題である。
 ICT活用については、時間的制限を受けるテレビ会議システムだけでなく、スカイプなどの使用についても検討することが平成21年度の課題となった。平成22年度は、テレビ会議システムが充分活用できたため、スカイプ使用の必要性はなかったが、必要時には活用できる体制は整っていた。
 平成21年度実習では、住民ボランティアとの交流と実習課題への取り組みのバランスについての検討を行なうことが課題となり、平成22年度は、毎日1時間は学生と民泊ボランティアが一緒の時間を持つことや夜の学習時間を確保できるようコーディネーターが調整することによってバランスをとることを心がけた。学生からは、民泊によって実習課題への取り組みが制限されたという感想はなかった。
 平成22年度は、実習中に発熱の学生が発生したが、民泊ボランティアとボランティアコーディネーターの連携によって、大学側や実習先への連絡など対応はスムーズであった。しかし、緊急時の連絡ルートが明確でなく戸惑ったとの感想もあったことから、民泊時の緊急連絡体制について事前の確認が課題であると考える。

 
     
     
     

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