島嶼看護

第V章 活動報告

 

第4節 住民ボランティアによる学生の学習支援
1.住民ボランティア活用状況
 宮古島で実習を行ったのは、平成21年度は7科目64人、22年度は7科目72人で、実習学生総数の約1割であった。そのうち、民泊の利用学生数と延べ数は、平成21年度は43人で199日、平成22年度は48人で172人であった。
住民ボランティアによる学生の学習支援として、「沖縄県立看護大学実習生受け入れのための住民ボランティア連絡会(みゃーくの会)」が中心となり、3つの部会(民泊、移送、講師ボランティア)が担当したが、学生はいずれかのボランティアの支援を受けて、宮古島での実習を行った。
 宿泊場所を提供し、学生と交流する民泊ボランティアでは、延べ数で平成21年度は21人、平成22年度は23人のボランティアが関わり、それぞれ43人と48人の学生を宿泊させ、民泊延べ数は199日間と172日間であった。学生は民泊先での高齢者などとの交流を通して、宮古島の歴史・文化や高齢者の生きてきた生活歴、礼儀作法、対人関係などについて体験的に学ぶことができ、実習での対象者との関わりや自らの看護観や人生観に少なからず影響を受けていた。
 民泊先と実習先の送迎などを行う移送ボランティアでは、延べ数で平成21年度は20人、平成22年度は34人のボランティアが関わり、徒歩で通える以外の学生全員の送迎を行った。移送ボランティアは、安全に細心の注意を払いながら、学生の調子をみて声をかけたり、道中で見える宮古島の風景などについて説明するなど、学生をリラックスさせ、実習に望めるように工夫していた。
 宮古島の歴史・文化や、宮古島における看護体験の講話を行う講師ボランティアでは、延べ数で平成21年度は14人、平成22年度は11人のボランティアが関わり、宮古島で実習した全学生に対する講話を行った。講師ボランティアは、限られた時間の中で、一方向にならないように、学生への質問や声かけなどを行いながら、双方向での講話を行っていた。また、講義形式だけでなく寸劇を取り入れるなど、回を重ねるごとに学生の理解を深める工夫をしていた。講話後、学生からは、宮古島の歴史・文化の理解に関心を持つようになったことや、実習における対象理解につながることなどの反応がみられた。
 これらの3つ以外にもボランティアの支援として、空港での歓迎や夕食会、空港での見送り、実習最終日の報告会への参加などを行っていた。
 平成21年度と平成22年度を比較しての特徴として、高齢者が中心だったボランティアから、退職看護師による支援が増加し、ボランティアが活性化されていた。具体的には、従来の移送や講師ボランティアに加えて、積極的に民泊ボランティアとして学生の受け入れたことや、報告会に参加し宮古島の地域特性や看護師の経験からの助言したこと、学生の体調不良時の臨機応変の対応など、看護師の経験も活かした上で、住民ボランティアとして、学習支援に関わっていた。(表3-4-1)

表3-4-1 宮古島住民ボランティア活用の概要

 

2.住民ボランティアの研修
 住民ボランティアは、学生への学習支援を提供する一方で、ボランティア活動を意味づけ、活性化せるために、研修を重ねてきた。平成21年度は、住民ボランティアと大学教員との交流から始まり、先進地区の視察や、ボランティアとしての主体性について学び、ボランティアとしての基盤づくりを行った。22年度は、先進地区の視察で訪れた神戸市からリーダーが来島し交流を深めたり、県立宮古病院と大学との協働プログラム開催の尊厳の研修にボランティア(市民)としての立場から参加するなど、ボランティア活動を発展させるための研修につなげていた。
各研修の概要については、以下に記す。

1)宮古島の歴史と文化体験研修(平成21年4月)
 宮古島のボランティア活動が継続し地域性が顕著に現れる宮古島トライアスロンに合わせて、住民ボランティアと大学教員との合同の研修を行った。目的は、宮古島の住民特性の理解や、その背景にある歴史や文化の共有を行った。住民ボランティアの声として、あらためて宮古島の歴史や文化を学ぶ直すことが出来たことや、住民ボランティア同士や大学教員との交流が楽しく行われたことを評価していた。

2)住民ボランティアの先進地区の視察(平成21年11月)
 ボランティア活動の実績のある京都市と神戸市の先進地区を、みゃーくの会のリーダーと大学教員で視察を行った。目的は、宮古島における学生への学習支援に活かすことであり、生活者が主体となった自治や福祉活動、地域特性を活かした住民同士や行政との連携などを視察した。

3)「当事者の主体性」についての講演会及び懇談会(平成21年12月)
 ボランティアとして主体的に学習支援や地域づくりに参加するために、小谷良子氏を講師に講演会及び懇談会を開催した。講演会ではボランティア活動の意味などについて理解し、懇談会ではボランティア活動と主体性を話題にしながら講師や大学教員、ボランティア同士で率直に語り合う機会を持った。

4)神戸市北須磨団地自治会リーダーとの情報交換会(平成22年9月)
 平成21年度にみゃーくの会のリーダーが先進地区視察研修を行った北須磨団地自治会(神戸市)のリーダーが宮古島を訪れ、みゃーくの会の活動や宮古島の地域活動、情報交換会などを行い、互いの交流を深めることができた。

5)協働プログラムの研修
 県立宮古病院と大学との協働プログラムで行った研修の中で、尊厳(倫理)に関する研修(身体拘束廃止、排泄ケア、認知症ケア)に毎回みゃーくの会のメンバーが参加し、保健・医療・福祉の専門職者と一緒にグループワークや講演を通して、ボランティアや市民の立場から発言していた。

3.住民ボランティアの活動報告と成果の共有
1)住民ボランティア活動の報告(平成22年8月)
 沖縄県社会教育委員の会議発行の『新しい形の地域コミュニティーの形成〜団塊の世代を生かした地域づくり〜(提言)』において、みゃーくの会会長により、宮古島市における事例として、ボランティアの取り組みが執筆され、民泊や移送、講師ボランティアの役割などが報告された。今後も、学生が宮古島での実習や生活体験を通して、宮古島に来てよかったと思えるような支援活動や、大学と協働で未来の看護職者の人材育成に関わることの意義について執筆されている。課題として、ボランティアの学びを地域住民と分かち合う研修の開催、団塊の世代に福祉・医療の人材育成を受け継ぎ、持続可能なボランティア活動としていくことをあげている。

2)学部GP成果報告会における学習支援の共有(平成23年1月)
 学部GP成果報告会にみゃーくの会のメンバー9人が参加し、3年間の宮古島における学生の教育方法の工夫改善や、住民ボランティアの活動の成果や今後の課題などを共有した。その中で、シンポジウムにおいては、ボランティア・コーディネーターにより、3年間のみゃーくの会の実績も含めて、「地域におけるボランティア育成と今後の展望」が報告された。

 

 

 

 

 
     
     
     

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