島嶼看護

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VIII  31st APNLCに参加して

沖縄県立看護大学大学院 博士後期課程 2年
新領域保健看護 謝花小百合

 6月15日から19日までの5日間、サイパン島のハイヤット リージェンシー サイパン ホテルでAPNLCのカンファレンスが開催され、それに参加する機会がありました。参加者は約130名で、アメリカンサモア、ポナペイ、トラック諸島、コスラエ、ヤップ、グアム、ハワイ、マーシャル諸島、パラオと北マリアナ諸島連邦(Commonwealth of Northern Maliana Islands:CNMI)のサイパン、テニアン、ロタの島々から看護職者がカンファレンスに参加していました。APNLCカンファレンスのオープニングセレモニーで、日本(沖縄)から初参加だと紹介されました。
 今回のAPNLC カンファレンスのテーマは、「Nurses Empowering Lives」であり、大まかにカンファレンスの内容は2つで構成されていました。一つは各島々の看護の1年間の取り組みに関しての進捗状況および課題の報告や各委員会(指名・推薦について、会則について、奨学金や教育・研究について、財政について、プログラムの計画について)のビジネスミーティング、あと一つは、継続教育に関しての講演でした。
 初日は、基調講演と各島からの報告でした。基調講演では、米国内務省のWada氏がEmpowermentについて話されており、看護師は人々のために直接行動するのではなく、ファシリテーターやカウンセラーの役割をとり、地域に暮らす人々がセルフケアをできるようにEmpowermentすることが重要であると述べていました。最後に、Wada氏は片手を頭の上でゆっくりとまわし、Zap(電流が流れるように、素早く行動し、そしてやり続けることの意味)、Zap、Zapという掛け声を観客と共に連呼し、会場全体がひとつになった感じを受けました。この会が発足して31年が経過しており、島々の看護職の連帯感の強さを感じました。

 次に、各島々(10 Islands)から看護活動に関しての進捗状況や課題の報告がなされました。共通して報告されていたことは、看護師不足に関するものでした。それを補うために早期から看護に興味・関心を持ってもらう目的で、高校生を対象に看護についての広報活動を行っていることや現在働いている看護師の離職防止のために、給与の引き上げを行っていることなどについて報告をしていました。
 カンファレンス会場の雰囲気は、日本の学会とは異なり、会場設定は、ディナーショーのようにややライトダウンされており、落ち着いた雰囲気でした。その中で参加者は軽い飲食をしながら報告や講演をリラックスして聞いていたのが印象的でした。

 継続教育に関しての講演は2日間行われました。疼痛管理、緩和ケア、睡眠障害、肥満と運動、抑うつと自殺など11の講演がありました。一番印象的な講演は、抑うつと自殺の講演で、実際に島の人々が苦悩している現状について15分間のビデオ放映がありました。島の人々は、個人主義や結果主義などの西洋文化の影響を受け、これまで人の和を大事にしてきた若い島民は、自己主張の習慣に慣れず徐々に抑うつになり、自殺の傾向が強くなってきているという現状を報告しており、自殺防止をするために、早期に抑うつのアセスメントを行い、介入する必要性を述べていました。異なる文化が人々に及ぼす影響の大きさを考えさせられました。
 
 異文化交流をメインとしたCultural Nightでは、各島々の看護職者が島の伝統衣装を身にまとい、伝統文化や余興を披露しました。日本からも何か出し物をと誘われ、本大学の神里先生、大川先生と大学院生3名が即興でザ・ブームの「島唄」を合唱しながら、沖縄の伝統踊り、カチャシーを会場の方々と踊りました。Cultural Nightでは、少しではありますが、各島々の伝統文化を学ぶことができ交流を深めることができたと感じました。
 このカンファレンスの創設者の一人である、Mary Sanchez氏から、設立当初のことについてお聞きする機会がありました。最初は、年に1回、各島々の看護職者が集まるだけの会であったが、第6回目より、現在のリーダー カンファレンスという名称に変更したとのことでした。各島々の看護職者がAPNLC カンファレンスで、自信をもってプレゼンテーションできるように、実際に現地に赴き指導をしたことや現地の看護職者が萎縮しないように、彼らの長所を最大限に活かせるように支援していったことなどの話を聞くことができました。その話を聞きながら、リーダーである人は、「まず相手に奉仕し、その後相手のもてる力を引き出し、個人への成長へと導くものである」というロバート・グリーンリーフが提唱したサーバント・リーダー (Servant Leader)を思い出しました。創設者の方々の、島しょにおける看護の質の向上に尽力された情熱とコミットメントに感銘を受けました。

 来年のAPNLCカンファレンスの開催地はパラオだそうです。来年もまたカンファレンスに参加し、異文化交流を深めていきたいと強く感じました。

 

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