島嶼看護

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第 V 章-3 日本公衆衛生学会「自由集会」参加

第68回日本公衆衛生学会 自由集会

私は、40数年前に保健師学校を出て、同級生と3名で八丈島の町の保健師として勤務しました。現在は人口から割り出して1人という形が多いと思うが、複数名で力を出し合いながら仕事をすることも非常に重要だと思います。1年間仕事をした結果を保健師雑誌(今は保健師ジャーナル)でアピールをしていたということもあるのですが、次に来てもらう人達を募集するために"同士を求む"という意味の広告を保健師雑誌(今は保健師ジャーナル)に出しました。かなりの数の応募をいただきました。その時私達が考えたのは、勤務2年間のうち1年は次の2年間勤務する人と合流という形で、必ず1年間は重なるようにする。2年間は短いと思われるかもしれないが、先輩から引き継ぐことができれば情報不足ではない。また、いつかやろう・いつか分かるだろうと思っていることも、2年という目標があれば積極的に情報を集めて活動するということもできるのではないか。できれば複数名採用してもらえるといいが、それが無理なら外側から応援団という形でサポートする。また、勤務期間が短くても全力投球で活動することもいいのではないかと思います。
 沖縄の自治体は理解度も高いと思うので、システムとしてそういう募集のかけ方もしていただけるのではないか?1つの村ではなく、複数の村でエリアを作れないかと感じますね。でも、八丈島は遠すぎて難しいですね。

バックアップという体制があれば、やはり違うと思う。今回GPで行われている「島嶼看護の高度実践指導者の育成」も現場をバックアップする、育てるという側面を持ち合わせていると思うが、大学が行政と連携してそういったシステムを作っていくとか、○○さんが話したように、広域連合みたいなのを作り、定期的に異動ができるようなモデルを作ると、新たな展開ができるのではないかと思う。

沖縄県では、地域保健法ができるまでは県の保健師が全市町村に配置され、2年〜3年交代で配置された市町村で駐在するという駐在制度があった。現在は、全市町村に保健師がいるが、県保健師の駐在保健婦制が廃止され残念である。

山梨県にも派遣制度があり、村の保健師がいない時は県の職員が2〜3年交代で派遣され働いていた。その頃の保健師がとてもいい活動をしたということで、私達も学生の頃、よく勉強しに行っていた。市町村の保健が業務を行う際、そのような経験をした県の保健師がいるということは、活動を助言してもらえることから心強い。先程バックアップ体制があったほうがいいという話があったが、同じ保健所管内の保健師の仲間が月に1度集り、情報交換や困ったことなどを相談しながら色々なことを進めている。島と本土を繋ぐというのではないが、同じ地域として保健所の仲間がいるので、色々相談ができるので心強い。山と島では違うが、同じようなことが考えられるのではないかと思う。

私は、平成16・17年度に東京都伊豆諸島の小規模離島3島が連携して、保健師の確保と定着の実態調査に加わり、伊豆諸島の町村の保健師に話を伺った事があるが、繋がりや複数名で勤務するなど支えてくれる人がいるというのはすごく大事で、同じところでも島内に保健所の支所がある島とない島では市町村保健師のやりがいやモチベーションが全然違う。市町村の保健師は専門職で他の職員は事務職なので、その辺の難しさや厳しさが全然違う。専門職なんだから赴任して1年目から働けるのは当たり前だという気持ちがすごくあったりして、保健所は他の専門職がいるからその点守られているところもあると思うし、また支所があるところは保健所の保健師がバックアップしてくれたりなどがあるので、それがすごく大きいなと思う。離島の場合はすぐに行き来するのが難しいが、みんなで情報交換するのはすごく大事だと思った。調査事業で思った事は、熱意を持って赴任する人は多いが、そこに骨を埋めるまで働いてくれというのは求められておらず、特に女性の場合2〜3年で保健師が代わっていくのはやむを得ないと思う。保健師が代わっても保健活動が定着、続けていけるようなサポート体制が取れるといいのではないかと思います。

島だから、小さい町・自治体だからこそ得られるものは非常に多いと感じられていると思います。遠い情報は不便かもしれないが、その代わり自分達がやったことに対する反応が非常に早い。行った保健活動に対して高く評価されると、周りにも伝えられていい状況が作られるということも体験することができる。2年でも看護職としてそこで育てられる部分がとても大きいと思います。

3)島だから、小さい町・自治体だから得られるものや経験について

島の人達と生活も共にしているととても距離が近く、都会との違いをヒシヒシと感じた。住民とは顔なじみなので島と都会でやる乳幼児検診や指導も全然違ってくるかと思う。地域の問題や課題なも地域の住民と共有しているという感覚を持って仕事ができたというのも、保健師としてのやりがいを感じられたからではと思う。

東京都八丈島の保健所に2年間いたが、住民と近いところで活動ができるため反応が早い。反応を見ながら活動ができるというのはすごく利点だと思う。島のいい面をPRし赴任してくれる人、定住してくれる人がもっと増えてくれるといいと思う。

生まれも育ちも同じところなので僻地という思いは最初からないが、小規模で住民と近いので、一緒にいろんなことを考え、実行するとすぐ反応があり、住民にすぐフィードバックできるのはいいと思う。大きいところだと相手の顔も分らないし全体を見てやらないといけないが、1人1人の課題を見つけて、それが地域の課題となり、保健師に何ができるのかということを考えられるのはいいところかなと思う。

沖縄本島と同じサービスを宮古島でも近い形でやりたいという意識が常にあった。住民のニーズや声を大事にしながら活動を展開してきたように思う。

以前、宮古島に勤務している時多良間(人口1,400)の巡回診療に関わった(現在は、院生として関わっている)。離島だと病院に通うのに経済的負担がかかる、家族と離れて生活するのは精神的負担がとてもあり、多良間村では宮古病院と協働で産婦人科・整形・精神科の巡回をやっており、住民がとても助かっているという状況がある。巡回診療に同行させてもらい色々見ているが、巡回することで住民の生活を身近に感じることができ、また診療後も保健師が住民との繋がりをもちながらやっており、いい活動になっていると思う。巡回診療のメンバーは、多良間村の保健師、宮古病院から医師・看護師が3人1組で巡回診療を行っています。精神の巡回診療に関しては、県の保健師も参加し4人で行っている。産婦人科は2ヶ月に1度、精神科・整形に関しては3ヶ月に1度に実施。巡回診療は診療だけではなく、精神の場合は訪問やデイケア後にケースカンファレンス等も実施している。なお、多良間村の保健師は2人体制で、診療所はドクター1人、ナース1人。
 精神に関しては、巡回診療以外の服薬に関しては1ヶ月に1度、中核病院である宮古病院から多良間診療所へ薬を送付し、それを利用者が診療所へもらいにいくという方法をとっている。
 薬の調整は、巡回診療時に行われる。巡回診療期間以外での薬の調整は、保健師から直接精神科医へ連絡をとったり、診療所の医師から精神科医へ相談し、調整が行われている。

八丈島でも週に1度専門医が来てはいるが、問題は主治医が固定しないため、薬の処方の仕方にも違いがあったりなど、私が勤務していた2年間で3〜4回程、救急ヘリで搬送された患者がいた。精神科では精神医との信頼関係の中で築き上げていく治療だと思うが、その点で何か工夫されている点があれば教えてください。

宮古病院の精神科は1人が緊急・訪問の体制を取っているようで、緊急連絡はその先生に情報が入り、その先生で判断できなければ、その先生から主治医に連絡して、薬や緊急の調整をお互い連絡し合いながら行っていると聞いている。

島嶼で働く保健師だと少ない専門職種で色々な判断を求められる。特に精神の緊急事例などは最たるもので、保健所に精神の救急が入る役割になっているので、そこの体制や整備も気になる。
 町立八丈病院では、内地から派遣された非常勤の医師がおり、巡回相談という位置づけではない。病院の都合もあると思うが、同じ先生を固定できないという問題もある。

多良間島の巡回においても精神の先生は固定されていない。前もって患者の情報はリストに上がってくるので、それとその時の患者の状態で処方は変わる時もあるが、島にいるということ自体が安定しているということなので、それほど薬が変わるということはないと聞いている。

長崎県立大学シーボルト校では、10年前の開設以来、総合看護の実習という形で4年生の前期に島に泊り込みの実習をしている。県としては島で就職する人を育てて欲しいという思いもあると思うが、私どもとしては島でなければ学べないことも非常に多いと思います。看護基礎教育の到達目標の中には、「生活している人を知る」「価値観を知る」など色々あるが、ベッドの上の患者さんを実習対象にするとなかなかそれができない状況です。島や小さな町などでは情報の速さ、島や地域の歴史、生活の価値観、生活習慣と健康とのつながり、主なる産業とそれに伴い起こってくる健康の問題、生活パターンの問題などが非常に学生にも分かりやすく見える。島という環境を逆手に取り、島だからこそいい看護の展開ができる場所ということで学生にも伝えていきたい。いつか、実際に皆でこういうパターンでこういうところに目を付けて評価していけば、もっといい仕事ができるのではないか、もっといいパターンを導き出せるのではないか、というようなことができたらと個人的に思う。

〈参加者の今後の連携について〉
  参加者の今後の連携について、勤務先のメールを確認し、
  今後情報交換などを行いたい旨確認した。

 

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