島嶼看護

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総合討議

當山先生(司会): 最後のシンポジストの玉城先生には限られた時間の中でお話ししていただきました。先生の方で何かつけ加えたいことがございましたらよろしくお願いします。
玉城先生:活動の持続可能性についてどうするかということが非常に重要だと思っています。特に、行政、大学、NGO、NPO、ボランティアを含めた連携を強めながら、ということが重要になってきます。大学は地域で触媒的な役割を担うことはできますが、リーダーシップをとるのは大変難しいので、やはり行政が地域の中心となってしっかりやっていくということが重要だと思います。それが持続可能性につながると思います。将来、地元の方にもそれ以上に頑張っていただきたいというお願い、期待をしたいと思っております。

参加者:私は更生ボランティアしている者で、若者がどうやったら明るい人生を送られるか、悪い道に走らないで行くかということに取り組んでいます。このシンポジウムに参加したことによって、子どもたちに「こういう頑張っている人たちがいっぱいいるんだよ。だから悪いことしないで頑張ろうね」という話しをすることができます。
私たちは年とともにだんだんといろんな病気を持ってくるかもしれません。そのときに看護師さんのお世話になるわけですよね。その看護師さんたちが一生懸命、大学院まで行って自分たちの技術を進歩させ、そして患者さんのために一生懸命頑張るんだというお話だったなと感じております。そのことは民間の私たちにとっては本当に素晴らしいお話で、これから安心していられるという気持ちになりました。本当にありがとうございました。

参加者:宮古病院の地域連携の看護師です。山崎先生のお話をとても興味深く聞かせていただきました。学生さんが最後に、「とてもよかった」という評価が島の実習とか研究だったということを聞いて、そこをもっと知りたいと思いました。そこに何かヒントがあるような気がしました。
山崎先生:今回は島の実習で学生がどういうことを学んでいるかと、あまり具体的な説明できませんでしたが、学生は多くのことを学んでいます。一つは、住民の方との交流があります。例えば夜、学生が泊まっている民宿の方が、「車を使っていいよ」と、疑わないで貸してくださったり、フナフロという対馬の伝統的な船のこぎ方を青年団が集まって見せてくれたりと、地域が学生を受け入れてくださっている。そして、壱岐ですと壱岐焼酎の工場で働いていらっしゃる方たちの健康状態を調べていったり、あるいは、猟師さんの作業姿勢などを理解するために船に乗せてくださったり。要するに、ボランティア的に非常に自分たちの生活を知ってもらいたい、分かってほしいということで学生に一生懸命関わってくださります。そういったことはやはり島の方たちが持っていらっしゃる温かさとかつながりの強さ、そういったところも学生は非常に学んでいて、自分自身の人間性まで考える学生もでてきます。人とあまり関わらない、何か言われてもあまり近寄らないような学生が、そういう壁の全くない住民の方たちの人間性に触れて、自分自身の在りようといったものを振り返る機会にもなっています。住民の方たちとコミュニケーションをとって、人間関係のつくり方みたいなものも学んでいっているというところがトップに上がる理由ではないかと思っております。
ですから、それを指導される側が、住民の方々に失礼じゃなかっただろうかと非常に気を使って配慮してくださり、フォローもしてくださいます。そういったバックにいる実習指導者の方たちと住民との連携があって成り立っているなというふうにも思っています。

参加者:佐久川先生に質問です。なぜ宮古島には助産師が少ないのかを教えてください。
佐久川先生:助産師の数については、徐々によくなってきています。宮古病院にも今、十何人か配置されています。その人たちは看護師という位置づけになっていますので、この数字の中には出てきていません。助産師の問題は今、助産師が専門性を発揮して何とか地域で安心して出産できるようにしなければいけないということで、どこでも助産師外来というのが開かれています。しかし、現状としては宮古病院に関しても思うように配置されていないというところです。
また、宮古島における助産師の数の推移や課題を調べたいと思い、開業助産師さんにも会ったりしましたが、もうお亡くなりになっている方が多くて以前の話が聞けないというところを残念に思っています。

参加者:私は県立宮古病院の感染管理認定看護師です。リーダーの持続可能な育成というテーマでお話をお聞きしし、今、この宮古病院をはじめ大学の協力も得て、かなりすばらしい学習環境を提供していただいているというふうに考えています。
私の今持っている認定看護師の資格や、専門性を持って看護していくというものを持続していくというためにはやはり同じように看護師をしているメンバーの中から、専門性を目指していく人を発掘していかなければならないという重大な任務もと思っています。その辺で何かご助言いただけたらと思います。特にどういうふうに後輩を見つけていくか、というところが今とても大きな問題です。佐久川先生お願いします。
佐久川先生:一つは後輩をどう育てるかというときに、専門職がこんなふうにいいんだよとか、楽しいんだよとか、こういう魅力があるというところを現場で見せることがまず必要ではないかと思います。ただ、全体、地域全体に言わせれば、今、看護協会がやっている専門職分野というのは19ぐらいあり、沖縄県にも40人ぐらいますが、その半分が県立病院に勤務しています。同じ看護師の中で、認定看護師あるいは専門看護師がいると、こんなふうに違うんだというところをまだ社会に見せきれていないのではないかというのをひとつ考えています。
これは事例ですが、ある亡くなった親戚がいて、私に「看護師さんがとてもすばらしかった。あの人たちは特別な勉強しているのか」という質問をしました。認定看護師ということは分からないのですが、患者さんの目にも違っているということが分かったんでしょうね。ですから専門性を持っていると、こういうふうに違うんだということを見せる。また、現場でもそれに続く後輩を育てるという環境づくりの努力はしなければいけないと思っています。
参加者:安谷屋先生にもご回答頂ければと思います。
安谷屋先生:私も看護師の専門性、認定看護師など資格等に関して佐久川先生に質問したいと思っていました。今日のテーマが持続可能で、持続可能のために何をするかということになってきます。例えば、この宮古病院の中からそういう人が出てこなかったら、その専門職が転勤したら、その力が落ちます。沖縄県立病院間では転勤というのがあり、持続可能のためにはどうするかということになってきます。ですから、3年間でローテーションしていく中で、その専門職を県全体のプールとして育てていくということをやる必要があると思います。それで、抜けた後はそういう人が育ってくるなりローテーションで入ってくるというシステムづくりをする必要があるのではないかと思います。また、勤務体系の中で忙しいところがあります。ですから、仕事の分担なども含めて検討する必要があるだろうと思っています。佐久川先生のご意見をお聞かせください。
佐久川先生:確かに、転勤したらいなくなるというところで、県立病院それぞれが、自分たちのところで必要な認定看護師、本当に必要なものに関しては、質に関わる医療の質、看護の質に関わるところなので、自分たちで育てるというところをぜひ現場努力としてやってもらいたいと思っています。全部必要かといったらそうでもない。
安谷屋先生:宮古病院で取り組んでいるボトムアップというのをどう考えるかということなのだと思います。教育ということに関していろいろ読ませてもらいますが、教育の手法というのはいろいろあると思いますが、基本的には、教える側にとっては、やはり熱意と情熱は欠かせないことだと思います。いろいろな思想があったとしても―。ただ、それに加えて、このボトムアップというか、ものを学んでいこうとする姿勢がないとなかなか難しいと思います。
興南高校が優勝したときに新聞のコラム欄を読み、卵の雛がかえるときに、その雛というのは中から必ず合図を送るらしい。コンコンと。それを親鳥が割るらしいのです。それが興南高校が優勝した選手たちと我喜屋監督の気持ちのつながりだろうというコラムに書いてありました。ですからやはり職員たちの何かをしたいというような殻を突き破ってくるような力というのがないと難しいと思います。その辺のところも、教育で人を育てるということは難しいと思っています。
参加者:私だけでなく、今、大学院に通いながら授業を受けている看護師もいて、現場でその人たちを育てるとか、次のリーダーになる人を見つけるんだとか、育成するんだという気持ちがないといけないんだと今日全体を聞いていて思いました。

金城先生:玉城先生にぜひこの場で先生のご意見をお聞きしたいと思います。高齢社会を目の前にして、超高齢社会ということで、我々自体がいろいろなものを開発していかないといけないということで、今日のテーマにもあるように、人材を育成していくという持続可能なリーダーの育成ということにつながると思います。先生のスライドの中で高齢者を若者が支えるという発想ではなかなかうまくいかないというか、閉塞感があって苦しいという感じがしますが、逆に、高齢者が若者を支えるんだというおもしろい図を見ると、少し元気が出てきて、地域の中の高齢者が多いところほど元気になれるんだよというメッセージがあったのかと思いました。先生がケアの転換とうことで、一つテーマに看護転換というのを示されていましたよ。それは、自分たちで考えろということなのかもしれませんが、ぜひ、もしこの時点で先生がお考えになっている看護転換とは何なんだろうというのを、アドバイスというか、先生のお考えをお聞かせいただければと思います。
玉城先生:先生がおっしゃったとおり、看護転換に移行すべきだという具体的なビジョンがあるわけではありません。今の介護・福祉の新しい転換の中で、もしかしたら看護という領域も超高齢社会に向けて何か考え直す必要があるのかなという提案くらいで、具体的なビジョンは示すことができませんが、これからみんなと一緒に考えていきたいと思います。

當山先生:ありがとうございました。締めとして私が4人の先生方から学ばせていただきましたことを一言でまとめたいと思います。
最初にお話しいただきました佐久川先生につきましては、宮古島教室を開所した当時からお世話になっております。医療の現場や地域で大学をもっと学びの場として活用したいということで、大学側もお世話になってばかりでなく、何かできることがあればもっとやらなければいけないということを感じさせていただきました。
2番目の山崎先生につきましては、長崎県での教育の実践を通して、いろいろなよい示唆を得られたと考えております。 
3番目の安谷屋先生からは熱意、学ぶ姿勢についてのお話があり、宮古島にはそれが詰まっていると思います。私たちももっと何とかしなければいけないのではという思いを奮い立たせられました。
最後の玉城先生の話では、島を「開かれた海洋地域」という逆の視点から広くとらえるという、前向きな刺激を得ました。
4名の先生方からいろいろな示唆をいただき、私たちが今回のテーマである「島嶼看護のリーダーの持続可能な育成」を行うにしても、やはり院生が来ないことには始まりません。私たち教員は待っていますので、どうぞ今日参加なさかった方、ぜひ希望して看護大学大学院に入学していただきたいと思います。今日はどうも有難うございました。

 

 

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