島嶼看護

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IV アジア太平洋諸島地域との交流の準備

2.太平洋島嶼地域における大学の視察・見学と学術交流協定の準備

1)グアム・サイパン・テニアン
 島嶼保健看護の構築を目指し、太平洋島嶼地域の看護教育や医療の現状を把握すると共に将来の学術交流の可能性を探索するためグアム・サイパン・テニアンの看護教育機関並びに医療施設を平成21年2月1日から2月5日までの日程で視察した。
(1)グアム
  グアムではグアム大学看護学部、医療施設3カ所の視察を行なった。グアム大学看護学部は太平洋島嶼地域で唯一の看護の高等教育機関である。グアム大学看護学部のBSN(学士)教育は、NLNAC(全米看護連盟)から認定されているとのことであった。グアムの主要死因は心疾患、悪性新生物、脳血管疾患、糖尿病などである。これらから、発展途上国でも死因は先進国と差はないと思われた。American Pacific Nurse Leader’s Councilを毎年、太平洋の島嶼で開催しており本年はサイパンで6月に予定している。OPCNにも招待状を送るとの話し合いがなされた。
  Central Public Health & Social Service、US Naval Hospital at Guam 、Guam Memorial Hospitalの3医療施設の視察を行なった。Central Public Health & Social Servicesでは結核や性感染症、Women’s Health, Child Health, 予防接種などを行なっている。特にFamily Nurse PractitionerやWomen’s Health Nurse Practitionerが女性や子どもの治療およびケアを行なっており、医師は重症なケースの治療を行なっているとのことであった。US Naval Hospitalは原則としてアメリカ軍関係者の治療施設であるが地域住民や旅行者を診察する場合もあり、また、テレメディスンで他の軍病院とも繋がっているとのことであった。Guam Memorial Hospitalは入院患者数が年間で11,000人、また外来患者数が年間27,000人のグアムで最大の医療施設である。糖尿病患者が多く、それに心疾患や高血圧、腎臓病を併発している者も多いとのことであった。
(2)サイパン
  サイパンではCommonwealth Health Centerを訪問した。サイパンには糖尿病腎症のため人工透析を受けている患者が多く、この施設では100名の患者が治療を受けているとのことであった。サイパンには3つの看護学校があり、この施設はその学校の実習施設でもある。分娩件数も年間1,400例あり6人の助産師が就業しているとのことであった。
 会議室にはテレビ会議システムが設置され、通常はテレメディスンとして使用されるが、米国に災害発生時にはこの施設がサテライトとしての機能をもつとのことであった。
(3)テニアン
  テニアンではTinian Health Centerを視察した。この施設での医療関係者は医師と看護師であるが、島で看護教育が受けられないので外国人を雇用していた。ここには入院施設がないので入院加療が必要な患者はサイパンの施設に搬送しており、妊婦も臨月になるとサイパンに出てもらいそこで出産をしてもらっているとのことであった。

2)台湾の看護教育並びに医療施設の視察
 平成21年3月8日から10日までの期間、台北医学大学看護学部および2カ所の台北医科大学付属病院を視察した。台北医学大学看護学部の教員数は33人であり、教員の年間英文の研究論文数は4.8件で台湾ではトップクラスである。看護学部の学生数は学士約400人、編入生280人、大学院生100人である。大学院の入学定員は修士課程44人、博士課程9人である。また、教育方針として教育と研究の専門家を養成することであり、大学院生は研究補助金でRAをしており、研究のアシスタントをしながら研究方法を学ぶことができると思われた。
  台北医学大学病院は900床の高度医療施設で、看護師数658人のうち学士46%、修士3%であり、高等教育修了者の割合が高かった。病院の方針として臨床教育の充実に力を入れていた。離島医療を担当している他の台北医学大学付属病院も視察した。その病院では管轄している離島との間にテレビ会議システムを導入し、状況に応じてテレメディスンを行なっていた。テレメディスンで対応できない患者をヘリで搬送し、病院で早期に治療が受けられるシステムを作り上げていた。
  上記の視察から、台北医学大学看護学部、医学部付属病院、ヘリ搬送システムで有機的連携が図られ質の高い看護教育や患者治療が行なわれていることが確認できた。

結論
 太平洋島嶼国並びに台湾では国情によって治療や看護に違いは認められたが、質のよい医療の提供を行ないたいとの姿勢は一致していた。これらの国々と学術交流することにより島嶼保健看護確立に向けた行動がとれると示唆される。

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