島嶼看護

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資料6:公開講演及び特別講演資料

第4回 公開講演会次第

2009年2月21日(土)

平成20年度大学院教育改革支援プログラム
「島嶼看護の高度実践指導者の育成」
第4回 公開講演会次第
テーマ:生活文化に根ざした島嶼看護の実践を目指して

場所:沖縄県立看護大学 視聴覚室
日時:平成21年度2月21日(土) 9:00〜12:00
講師:佐々木 雄司 (元東京大学・琉球大学教授)
演題:「島嶼看護」への期待―コミュニティメンタルヘルスの視点から

司会:仲宗根洋子 講師

1.9:00 開始:司会
2.9:00〜9:10(10分) 大学院教育改革支援プログラムと第3回目の
講演会の報告:大学院GP責任者:神里教授
講師紹介:大学院GP:當山教授
3.9:10〜10:40(90分) 講演:佐々木 雄司 先生
4.10:40〜10:50(10分) 休憩
5.10:50〜11:50(60分) 講演
6.11:50〜12:00(10分) 質疑応答:司会
7.12:00 閉会:司会

 

「島嶼看護」への期待
−コミュニティメンタルヘルスの視点から−

精神科医 佐々木 雄司
沖縄県立看護大2009.2.21(土)

○私の2つの専門領域:(Community)Mental Health とシャマニズム
○私がなぜ琉球大(S52.2〜56.9)へ?

I .離島プロジェクト(S53.3〜H2.12)

 1)そのあらまし(開始時人口1200、13年間、3泊4日×31回、直接支援67例、総把握101例)
 2)強烈な教訓を与えてくれた2人――経過の概要と問題の提示
   a.自殺した主婦A子さん 53歳

     ・精神衛生巡回相談 第1日目 早暁
     ・{“精神衛生”の問題かもしれない}    {巡回相談がその日から始まる}
      

b.ピンチを脱した“奇妙な”B子さん 37才
 

  3)両者の命運をわけたもの ―― 提示された問題の検討
     身近な相談相手・受皿
     知識、偏見
     沖縄の文化:ユタ・ヌルとカミダーリィ
      ※A)シャマニズム研究者としての佐々木!
       ex.柳田の3つの民俗学
     後方医療機関と島嶼看護:限界と強味

  4)A子の教訓がB子のどこに生かされたか

II.13年間の実践(コンサルテーション・ワーク?)とその思い
  1)大まかな流れ(T期〜Y期)Prof.當山から
      準備
    I 期.個別支援
    II 期.健康教育
    III 期.集団活動(断酒会の誕生 S57.4.25)
    IV 期.活動の検討
    V 期.“畑”
    VI 期.“畑”、仲村永徳医師への引継ぎ
        断酒会発足25周年記念祝典(H20.11.29)

  2)各期の展開とその意義
     実施前の思惑
     始まってみると・・・・・。
     終わってから考えること
     今考えること

III.駐在保健婦と巡回チーム
  1)離島での看護実践の意義
      島嶼の象徴としての離島
      離島に要求される CMH の凝縮
   ※B)Community Mental Health の視点(佐々木流?):A子、B子を振り返りつつ
   ― 臨床精神医学との差(精神科医療の第4革命)

我国の CMH の特異ななりたち(Community oriented と Hospital oriented)
 ― 第一世代の1人として
理念的には
 イ.健康管理の基本構造

 健康問題に携わる人 → メンタルな領域
 コミュニティケアチーム(みんなで)
       地域社会のメンタルヘルス
       職場の   〃
       学校の   〃

メンタルヘルスの活動とは、治療の場のみならず、「生活の場」のあらゆるスタッフ(職種)がメンタルヘルスの理解を深め、相談の力をつけ、同時にその輪を成員全体にひろげること。

ロ.病院医療の2つの限界の打破 ― 特徴の1つ
 1.受療せねば...未受療、受療拒否 ― 本人抜きの相談
 (家族・職場の上司から相談、近隣苦情)、Identified Patient
 2.受療しても.....医療不信 ― 転医相談、医療中断
ハ.CMHの2つの理念(病院医療との相互補完・補強)
 1.ケアの一貫性・継続性
 2.地域責任制
ニ.自己完結 → コミュニティケアチーム
     ――― ヒトリ(単独、職種、機関)ではムリ、互いによいトス
ホ.MH活動の2つの軸足(個の相談 ←→ 法・制度・社会資源の整備)
 cf.小鹿野町(秩父)の保健医療活動 → 包括医療

技術的には ―― 相談・支援活動の要は受理面接と Case-Conference であり、事例性概念 caseness の重視が鍵となる
イ.佐々木精神衛生学の2つの柱
 1.事例性 caseness (事例の浮び上がり方・経緯の重視)
 ── すべての支援は「相談」が基本で、そのスタートは「受理面接」
   ・本人からの相談
   ・本人以外からの相談(Identified Patient → Client:社会防衛と人権)
    ―― 医療の中断・放置;近隣苦情;不登校、ひきこもり、家庭内暴力;虐待
    ―― とくに「関係スタッフから」に注意!
    受理面接の重要性↑(相談者を大切に、その役割、ニード、ワーカビリティ等の見定め)
     本人の気持ちの尊重、オープンにするということ
     相談をどこまで誰が受け、どこからどう誰に頼むか。引き継の勘所と陥穴
     できること・できぬことのみきわめ
   ・支援者側が気づいた時、他の業務の中で浮かんだ時、序で相談
    2.オヤ!?
ロ.話を聴く(受容、共感)―どこまで判るか(判ったつもりにならぬ)、上手な問い返し

ハ.大きな枠組み、位置づけ ――― を考える習慣
 医療機関と相談機関(保健所、市町村保健センター、他):その特性(強味と限界)と活用
  診療科、精神科医の特徴と選び方;
    精神科、心療内科、神経内科、神経科、脳神経外科
  相談 ≠ カウンセリング

ニ.Case-Conference への私のコダワリ ── 研修の3要素(知る、わかる、できる)
1.紆余曲折の末に辿りついた現在の心境:CCこそあらゆる学び・気づきの源である。
 しかし、CCに王道はないし、「原則」もない。各参加者の柔軟性如何に左右され
 る部分が大きい。処遇会議との別
 CC = 相談(とくに受理面接):相談・同席面接の訓練でもある

2.さまざまな CC:その一長一短
 ハーバード方式     ←→   Incident Process 方式
 行きづまりや疑問※の提示  ←→ 研究発表  ※いつの時点の?
 Reporter-oriented   ←→   Case-oriented ※主体性の育成!!
        Why   ←→    How to       

 2)この離島でのコンサルテーション・ワーク(?)
   なりたたせたもの
   配慮した点
   配慮できなかったこと ―― 今にして思うと
   同一職種(スーパーヴィジョン)と異職種;年齢、キャリアetc

IV.おわりに:島嶼看護とは ―― CMHの意義、位置づけ(我田引水?)
  島嶼でより要求されるもの ―― 主体性!!、共通言語
  実践指導者の育成という課題
  「でいごゼミ」を振り返って ―― 人材の活用

参照
佐々木雄司1.「生活の場における実践メンタルへルス」、保健同人社、2002
     2.「宗教から精神衛生へ」、金剛出版、1986
     3.「沖縄の文化と精神衛生」、弘文堂、1984

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