島嶼看護

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第 III 章-2 平成21年度 自己点検評価会議と自己評価報告書

組織的な大学院教育改革推進プログラム(島嶼看護の高度実践指導者の育成)

組織的な大学院教育改革推進プログラム
島嶼看護の高度実践指導者の育成
平成21年度 自己評価報告書

沖縄県立看護大学大学院
平成22年2月

<本プログラムの目的>
 本大学院の博士前期・後期課程の先端保健看護分野に新たに、島嶼保健看護領域を設置し、宮古島を拠点とした教育・研究活動を通して、島嶼の看護活動と多職種連携活動を担う高度実践指導者、実践的教育指導者の育成を行うことである。

<H20年度〜22年度の計画>
H20年度:島嶼保健看護カリキュラムの準備
H21年度:島嶼保健看護カリキュラムの開始と1年目の成果評価
H22年度:島嶼保健看護課題研究ならびに特別研究 II の指導と2年目の成果評価と公表

<H21年度の具体的計画>
・島嶼保健看護プログラムの開始
・太平洋諸島との交流開始
・遠隔講義および会議でのインターネットの活用
・H20年度と21年度の成果評価
・H22年度入学者募集と科目履修生の募集と入学試験の実施と合格者の決定
・社会に対する大学院GP活動の情報発信

1.島嶼保健看護プログラムの開始
1)島嶼保健看護に関する入学生ならびに科目履修生へのオリエンテーション
学生の受け入れ:
博士前期課程学生2名(宮古島と波照間島在住)、博士後期課程2名(本島内在住)の学生4名が入学した。長期履修学生制度を始めて取り入れ博士前期学生1名がその制度を活用している。科目履修生は、地域文化看護論と多職種地域連携論の各1名であった。
指導教員の選定など:入学後のガイダンスにて、各学生の関心領域を考慮して、指導教員、指導補助教員、複数指導体制による指導教員を決定した。
ガイダンス:通常の大学院のガイダンスに追加して遠隔での通信利用に関するオリエンテーションを行った。

評価:博士前期・後期の学生の定員枠は、前期2名、後期1名であるが、入学者は、後期課程の学生は1名増で2名、よって総計4名であり、適切な学生数の確保ができた。
 博士前期課程の学生は、島嶼在住の遠隔の学生であり、宮古在住の学生は主に、宮古島教室のテレビ会議システムの利用と現地指導による授業を行った。波照間在住の学生は、授業の内容によって宮古島教室や自宅からの遠隔システムを活用したネットで授業に参加することができた。これらのことから、可能な限り遠隔の学生に配慮した指導体制がとられたと評価できる。
 博士後期課程の学生に関しては、本島在住であるが、授業の内容に応じて、本学のみでなく、宮古島教室での授業展開を行うことで、宮古島の保健医療事情を理解しやすい学習環境を準備することができた。また、学生は保健島嶼看護領域のTAとして務めることで、より多面的に島嶼看護の実際に触れることが可能となった。

2)島嶼保健看護のカリキュラムとして、特論・演習・実習など島嶼保健看護に関する9科目を開講
開講科目は下記のとおりである。
博士前期課程科目(6科目):島嶼保健看護特論 I 、島嶼保健看護演習、島嶼保健看護実習、地域文化看護論、多職種地域連携論、課題研究
博士後期課程科目(3科目):島嶼保健看護特論 II 、島嶼保健看護特別研究 II 、国際島嶼保健看護論
科目の開講方法:島嶼保健看護に関する講義や演習などは、基本的に土曜日・日曜日の週末を活用して開講し、シラバスにて開講日時を明示した。

島嶼保健看護特論 I ・ II :本大学と宮古島教室の双方向で開講し、宮古島における現地指導教育と本大学からビデオ会議システムを活用した遠隔教育の融合型教育を行った。授業方法は、本大学の看護系教授8名を中心に国内の非常勤講師2名やゲストスピーカー1名を含んだオムニバス形式で行った。
島嶼保健看護演習・実習:宮古島の地域文化的背景を考慮しながら、現地における保健医療福祉関係者との多職種地域連携を意識した演習・実習を担当指導教員2名で展開した。6単位の実習の内、1単位分(1週間)の実習は太平洋島嶼地区(グアム・サイパン・テニアン)で実施した。県内の島嶼地区での実習は、渡名喜島の診療所や石垣島などの保健所を中心に実習を展開した。演習の一つとして、日本島嶼学会主催の久米島大会に参加をさせ、看護系以外の学際的研究者と交流を持つことで島嶼に関する理解を深めるようにした。
地域文化看護論、多職種地域連携論:地域文化看護論は、看護系教授2名と学外非常勤講師1名によるオムニバス形式による講義で、地域文化に関する課題を学生に提示し、各自の課題のワークを持ち寄って、グループワークを中心にした授業展開を行った。さらに、グループワークでまとめた内容を、文化看護学会において発表した。
 多職種地域連携論は、看護系教授3名と宮古島病院や保健所・福祉関係などの多職種からなるゲストスピーカー10名によるオムニバス形式で授業を展開した。
国際島嶼看護論:国内非常勤講師2名、国外の太平洋島嶼5カ国*からの非常勤講師6名によるオムニバス形式と集中講義の形式で授業を行った。その際、各先生方に1コマを公開講演の形で、学内や県内外の保健医療関係者に幅広く受講を呼びかけた。公開講演会の開催回数は、2月末で3回、これまでの延べ参加人数の総数は、144名(宮古島教室での遠隔参加者49名を含む)で、本大学から宮古島教室や小浜島などの診療所へ遠隔システムを利用して講演会の内容を配信した。講演会終了時には、無記名による自記式アンケートで評価をもらい、次年度開催に向けての参考にしている。講演会以外にも、島嶼保健看護領域以外の大学院の学生や教員に、講義の参加をオープンにし、さらに招聘講師から専門的知識を得るためのフリーディスカッションの場を設けるなどして、太平洋地域の国々の医療保健看護事情についての情報の共有と学術的交流を行った。*太平洋地区5カ国:グアム、オーストラリア、台湾、ニュージーランド、ハワイ
課題研究、特別研究 II :博士前期課程の学生に関しては、特論・演習・実習を通して得られた知識の統合を通して、宮古島における保健医療看護の課題を明確にさせた。さらに、これに基づき研究テーマを選択させ、研究計画書立案について支援した。その結果、博士前期課程2名の学生は、課題研究計画書を作成し、倫理審査委員会の承認を得て研究を開始している。
 博士後期課程の学生は、各自の関心テーマにそった研究計画を立案中である。また、博士後期課程の学生の研究推進のために、宮古島病院の看護部と共に「看護部離島支援のための共同開発プロジェクト(仮称)」の立ち上げを支援している。

担当教員や学生との開講科目に関する情報共有と改善に向けての検討会:前期開講の終了科目に関しては、9月に学生と大学院GPワーキングの教員とグループ討議を行い、授業の反省会を行った。さらにその結果をもとに全科目担当教員との懇談会を開催し、後期開講科目の授業展開に活かすことができた。
 後学期開講科目終了後、前期と同様に学生との反省会を2月に開催し、その結果を科目担当教員へフィードバックしながら担当教員との懇談会を開催した。さらに、次年度の科目に活かせるようにシラバス内容の検討を行った。教育内容や教育方法についても、担当教員間と情報交換会を持ちながら検討会議を開催する予定である(4月)。その他に、学生、教員、遠隔システム関連の事務職員に対して自己評価表を作成して、自己評価を行っている。

評価:H21年度のシラバスに沿って予定通り、授業展開ができた。授業の展開は、遠隔システムと現地指導体制にて実施した。H21年度入学生に関しては、H22年度の受講科目として、博士前期課程が実習と課題研究、博士後期課程が特別研究 II を残すのみとなり、その他の6科目は修得済みである。
 今年度の反省を踏まえて、各担当教員が密に連絡を取りながら情報交換会やシラバス検討会を行うことで、よりよいプログラムとその運営についての方向性が得られている。

3)TA・RAの活用
博士前期課程の学生1名、博士後期課程の学生1名、総計2名が学部教育や大学院教育にTAとして携わることで、教育方法に関しての学習と経済的支援に役立っている。博士後期課程の学生1名がRAとして、【H21年度科学研究費補助金「基礎研究(C)」:看護学士課程における島嶼看護学教育の効果と課題に関する研究】に関わることで研究能力の向上に寄与している。

評価:博士前期学生のTA総時間数は180時間(学部実習)、博士後期課程のTA総時間数は60時間(演習や地域文化看護論)、さらにRAは120時間であり、いずれも島嶼保健看護関連の内容であり、TA・RAの教育的目的に沿って起用できたといえる。3月末に時間数と実施内容の評価を行う予定である。

2.太平洋諸島との交流開始
1)短期研修の条件の整備

 太平洋島嶼地区で開催された会議や学会の参加を通して、島嶼における専門職との交流を深め、情報交換をしながら研修計画を立案している。
第31回American Pacific Nursing Leaders Council Conference参加:サイパンで開催された第31回太平洋諸島看護リーダー会議に大学院学生3名、教員2名が参加し、ミクロネシア諸島などの太平洋の10の島々との看護職リーダーと交流を持った。さらに、太平洋地区における島嶼保健看護の実習調整や国際島嶼看護論の非常勤講師との調整を行った。会議参加内容に関しては、報告書を作成し、全教職員へ配布した。
第27回Annual National CRANAplus Conference参加:豪州における第27回遠隔看護学会に教員1名が参加し、遠隔看護教育に関する情報収集や学術的交流を行い、国際島嶼看護論の非常勤講師や国際シンポジュームの招聘講師選定のための情報収集を行った。

評価:上記会議や学会参加にて、大学院GPに関する情報を発信することで、太平洋地区の看護職との信頼関係の構築と、島嶼看護に関する学際的な交流へつなげることができた。具体的には、太平洋地区での実習実施の実現に向けての調整や国際島嶼看護論の非常勤講師の選定が可能になった。

2)短期実習・研修ならびに交流プログラムの開始
博士前期課程の学生2名が、島嶼保健看護実習としてグアム・サイパン・テニアンで1週間の見学実習を行った。博士後期課程の学生1名は、太平洋地区における看護職との学際的な交流を目的に、グアム・サイパン・テニアンにて、1週間の研修を行った。教員3名は、通訳や各自のFD、引率教員として参加した。  実習や研修した内容に関しては、報告書を作成して、大学院生や教員に配布し、情報の共有を図る予定である。

評価:グアム大学を中心に、太平洋諸島の10の島々の看護職リーダーと学際的な交流を深めることができた。また、グアム・サイパン・テニアンにて実際に実習を行うことで、各諸島の特徴と保健看護に関する課題を共有することができグローバルな視点を養うことができたと考えている。 豪州における学会参加では、遠隔看護に関する専門的な知識を得ることができ、今後の島嶼看護の概念を構築していく上で参考になった。国外の実習や研修を国内の状況と比較しながら、島嶼看護の学問の構築にどのように位置づけていくのか、さらに共同研究や学術交流をどのように行っていくのか今後の課題である。

3) 国内・国際シンポジュームの開催の準備
太平洋島嶼地区から講師を招聘して、宮古島において国際シンポジュームを開催する予定である。日程は2011年1月に予定しているが、詳細な日程やシンポジュームのテーマや内容、招聘講師に関して、現在情報収集を行いながら検討中である。

評価:具体的な日時やシンポジュームのテーマや内容、さらにシンポジストの選定など、3月末までには案を作成して、次年度に向けての準備を進めていくことが必要である。

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