島嶼看護

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9.実習所感

海外実習の所感

学生氏名:盛島幸子

 平成21年4月、入学したその日の履修科目に関するオリエンテーションの中で、島嶼保健看護の院生は、外国の実習もあることを知り、ワクワクしていた。通訳がつくので問題はないが、慣れない英語に触れる機会を作ったり、情報で実習先をイメージしたりしながら、自己の課題を持って実習に参加した。
 平成21年2月15日から19日までの5日間、グアムで1日(グアム大学看護学部の紹介、3つのヘルスセンターの責任者の講義、北部Dededo 保健センターの訪問、基幹病院であるメモリアルホスピタルの看護部長の講義)、サイパンで2日間(Marianas Health servicesの訪問看護に同行、サイパンのCommonwealth Health Center病院での講義、Marianas Visiting Nursesの訪問看護に同行、地区踏査)、テニアンで2日間(ヘルスセンター内のナースの業務内容と訪問看護同行)の実習を行った。
 どの島も、街中や訪問で農道・山道に至る道路を通っていてもチリ一つ落ちていないきれいな島で、島の人たちは英語を使い、とても初めてとは思えないほど、フレンドリーで、実習先々で歓迎され、島特有のプレゼントをいただいた。年平均気温が27度というから、宮古島より暑い。すぐ近くにある場所も暑さのせいか、遠いといってしまうほどである。
 人口が約17万のグアム島は、ブランド品の店がずらりと並び、はなやかで、8割の観光客が日本人で占めるという。人里離れた山の中に住むチャモロの人たちは、道も舗装されず、電気や水道もままならない貧しい生活をしていた。初日には、そこを見せてもらう機会も作ってもらった。そこでのナースの関わりは、子供の健康チェックと予防接種(家族は、イエロウカードに記入されているのでそれを持参)を受けているかどうかのチェックであった。予防接種を受けていることが、小学校に入学する要件になっていた。行政のサービスが濃厚に必要な地域だと感じた。
 グアム大学看護学部は教育・研究・コミュニティーサービスを行っており、学生には、評価基準を設けて、400以上の学生は政策への提言や変革プログラムにも参加してもらっているようであった。これは、学生のやる気にもつながる面白い企画だと思った。実習現場で課題となっていることが題材となって、現場の看護職と一緒に研究しているので、それが現場のナースの継続教育にも繋がっているということであった。学生実習においては、多くの指導者が学生をとりたがるというから、学生もまた幸せである。大学は、2006年から国の助成金をもらって地域・島に出向いて学生の募集と年に3,4回ナースの継続教育も実施しているとのことであった。
 グアムにある3つのヘルスセンターは、母子保健のコーディネーターを頭に所内と所外(北部・南部)に分かれて活動していた。母子保健、災害看護の一部(航空機事故、台風)、補助金による訪問(慢性疾患予防:アドバイスと検査、インフルエンザ予防、予防接種、思春期保健、家族計画、ハイリスクチルドレン支援)が主な役割であった。その他にも連邦の予算で特殊ニーズのある子どもたちに対し、ハワイから整形外科医が年2回、Drのトレーニング・巡回診療、遺伝疾患防止チームを送り支援されていた。グアムのヘルスセンターは、日本で、保健所と市町村の保健センターが一緒になった形になっていた。
 そこでは、ヘルスとソーシャルサービスのゴールは、自己決定ができることとしているが、社会的な役割・雇用、ホームレスへの家の提供、小さな島からお産のためグアム(米国の国籍、市民権を得ていい生活をさせたい)にくる妊婦が多いという問題を抱えていた。
 人口が5,800人のサイパンでは、ケア技術の高い素敵な訪問看護師と同行訪問ができ感動した。看護師は一人で50件を担当し、訪問の時間を守ることを鉄則としていた。家族に挨拶した後、人形のように無表情でベットに横になっている寝たきりの高齢者に向かって、最高の笑顔と暖かい声で「マカンダ:きれい」を連発した。すると、寝たきりの高齢者は、いい気持になったのでしょう、見る見る笑みを浮かべて、すごくいい顔になった。そこで、はじめて。血圧測定、背部の褥瘡の部位を定規で測り、丁寧に手当てをしていた。ずいぶんきれいになったと話していた。自分のケアの評価をきちっとしながら看護していた。年に1回は、介護で頑張っている方たちを集めて、マッサージをしたり、プレゼントをしたりしていた。また、新聞に投稿し、労をねぎらい、やる気を出してもらっていた。家族や地域と一体になった訪問看護に感動した。
 テニアンでは、糖尿病が多いため、学校の子どもたちの調査を実施し、50%に肥満の子どもたちがいることから、給食(朝食・昼食は学校給食)の量について検討する必要があり、栄養士を導入することを考えているようであったが、子どもたちへの意識調査は後回しになっていた。大人についても5年間の課題としてプロジェクトを立ち上げていた。サイパンからフィジカルセラピストがきてエアロビックスや水中運動を指導した。しかし、うまくいっていないようであった。70人に電話連絡で眼底の検査を受けるよう呼びかけたが、5人しか集まらなかった。それは、プロジェクトをはじめる前に、コミュニティーに行って、DMの住民に何をしたいか、何を必要としているかを聞かないといけないのに、聞かなかったからだと話していた。
 きっかけ作りは良かったが、行政のニーズだけで動いてしまい、対象者の声を大事にしなかったことが反省点となっていた。テニアンは人口が3千人で、生活が見やすい環境にあるので、住民と一緒になって、健康課題の解決ができそうに思えた。健康づくりで頑張っている人たちがいるので、きっとその人たちがリーダーになれると思う。
 実習では、自己の課題をもって臨んだものの、理解力が不十分で、思い通りにはいかなかったが、看護職が教育現場や病院、さらにヘルスセンターや訪問看護で、それぞれの役割と誇りを持って頑張っている姿勢に感動した。
 訪問先の寝たきりのケースのお父さんが沖縄の人だと知った時は、外国なのにとても身近な感じがした。海は想像した通りのきれいな海で、砂浜の近くまで、海藻がびっしり生えていたので、きっとさかなも多いだろうと思ったら、バナナのカスでびっくりするくらい魚が集まっていた。今回の実習地は、第二次世界大戦で多くの日本人がつらい思いをした場所で、参拝しご冥福を祈った。
 今回の実習のため、多くの準備や当日の引率、通訳と先生方には大変お世話になり、また、実習先の職員の皆様には、快く歓迎していただき、実習が出来ましたことに感謝致します。

 

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