島嶼看護

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9.実習所感

グアム・サイパン・テニアンの研修

沖縄県立看護大学 博士課程後期 仲宗根洋子

 島嶼看護学について本格的に取り組むためには、一地域のみでなく、様々な地域における島嶼性を知ることは重要と考える。本学の島嶼看護課程は、そのためのプログラムを我々に用意してくれている。今回、沖縄と同じく環太平洋の島嶼地域グアムおよび北マリアナ諸島のサイパン・テニアン島における医療機関を中心とした研修に参加することができ、まさに「百聞は一見にしかず」さまざまな学びがあった。これより経験したいくつかについて記載し、研修の振り返りとする。
1.グアム大学の看護学部のカリキュラムの概要説明からグアム看護大学の学生は、パラオ、北マリアナ地域、ミクロネシア、マーシャルアイランド、アメリカンサモアなどアメリカの援助国の地域から集まっている。学部は2つのプログラムBSN とADNを提供している。学生数はユニバースティグアムの300名の学生中から約20〜30名が選抜されて入学する。コースはヘルスサイエンスとエクササイズ、フジカルアセスメントからなり、10のコアコースの土台となっている。それは専門職としての行動、ケアリング、研究、コミュニケーション、マネジメント・リ−ダーシップ、文化的能力、法的/倫理的、クリティカルシンキングなどでラリストーン型(右図)のシラバス構成図になっている。土台がしっかりしている。


平成21年度国際島嶼論講義資料集より



2,サイパンの一般的保健医療事情
サイパンコモンウエルスヘルスセンター看護部長アイプリル・リコ−タの説明から、サイパンの多民族人口のヘルスケアの困難性、疾病では2型糖尿病が最も多く、もともと遺伝的に糖尿病になり易い上に、欧米型への食生活の変化により年々発症が早くなり、保険のない人の悪化してからの受診による透析導入になるケースが増え悪いサイクルとなっている現状があることがわかった。サイパンコモンウエルスヘルスセンターは、看護師181人で、RN119人、准看護師22人、助手16人で3人のNPとナーシングエディケーターを有している。特別に希望してナーシングエディケーターの話を聞くことができた。71歳の経験豊富なナースは、OP前・後の安楽、疼痛緩和、ダイエット、早期離床、スモーカーカウンセリングについて話してくれた。ドクターのオーダーや、チャートから、またはラウンドして必要に応じて関わり、他にもヒーリングハンズ、血糖測定、フットケア、褥瘡チェック、退院計画チームにも加わっており、マルチプルな看護専門職者といえる。
サイパンは、日本から南へ約2400Km、飛行機で約3時間の所に位置し、北マリアナ諸島(CNMI)14の火山性の島々のグアムに次ぐ本土島である。サイパンには人口63,000人が住んでおり、84床を有するサイパンコモンウエルスヘルスセンターの他、3つの訪問ケア施設がある。有人島は3つでホギン島には15〜16人しかすんでいない為、無線システムによる健康管理が行われている。またテニアン島とロタ島にはヘルスセンターがありそこからの急患や紹介患者の受け入れ患者数は、2007年には年間400人から2010年には1,000人となっている。
3.テニアンでの訪問看護
テニアン島は、先住民チャモロ人とカロリニアンで60%を超え、その他1300人の契約労働者がフィリピンなどから移住し、多様な文化と言語が混在している。
テニアン出身の看護師と一緒にフレミング家の81歳のパーキンソン病の女性のために訪問看護が計画され同伴した。その日は血糖測定、朝食の様子、足の浮腫はないか、スキンの状態、さらにその家のケアギバーに対する質問(教育)などが訪問看護の内容であった。裕福な家庭の訪問看護の1事例であったが、小さなコミュニティで大変興味深い体験となった。
日本の南西諸島に住み、人の健康について常に考える仕事をする上では、この価値観の広がりは人間理解の広がりを意味するものであったと思う。

以上

 

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