島嶼看護

第V章 活動報告

 

第5節 ICTに関する教育環境の整備と活用
1.ICT教育環境の構築   
 平成20年度は、新遠隔対話システムとして、JoinMeeting(Web上の会議システム)とPolycom HDX(2〜4地点会議システム)を導入した。その際、ネットワーク環境をNTT西日本提供のVPNに新規変更し、学術情報センター(SINET)への接続も、琉球大学ノード経由へ変更した。同時に、琉球大学、沖縄大学ならびに県内プロバイダーが協同提供しているOIX (Okinawa Information Exchange)への接続環境も構築した。しかし、県内OIX環境は、平成21年度に中断し、平成22年度以降は宮古島サテライト教室(県立宮古病院内)と本学間のVPN利用を中心とした。この理由は、OIX利用による大学間交流の具体的な内容を打ち出せなかったこと、コスト・パフォーマンスのバランスから中断が妥当と判断できたことである。また、JoinMeeting自体は多機能なウェブ会議システムながら、通信回線と遠隔学生のパソコン環境に依存しており、音声のハウリングや遅れ(タイムラグ)などから、しだいにSKYPEによる音声確保へと再シフトした。すなわち、本取組ではSKYPEの安定性が遠隔対話には必要という認識を繰り返す結果となった。
 また、サテライト教室内のパソコンから、図書館情報システムや文献検索データベースなど、学内資源がオンラインで利用可能であることから、平成21年度には宮古島内の実習指導者向けICT研修を実施した(平成21年度報告書参照)。加えて、臨地実習の前・中・後は、実習指導教員を通して学生の積極的な活用を推奨したが、県立宮古病院以外の他施設での実習の場合、学生が実習終了後にサテライト教室へ移動してネットワークを活用する時間的余裕はみられなかった。このようにサテライト教室以外でのICT環境の向上が課題として残されている。

2.ICT教育環境の活用
 平成20年度は準備・導入期であり、試験的な利用に留まった。平成21年度の使用頻度は前期(4/1−9/30)で21回、後期(10/1−3/31)では22回であった。その多くがPolycom HDXを用いた授業展開であった。平成22年度は約2.5倍(102回)に使用頻度が増加し、その多くがPolycom HDXによる本学とサテライト教室間のコミュニケーションであった。本学とサテライト教室間は学内LAN環境にあるため、比較的安定性が高く、授業だけでなく、打ち合わせ、報告会など、参加者・人数も様々で多面的な活用法が展開された。なお、平成22年度の場合も、FCS(Flash Communication System)やJoinMeetingは選択されず、SKYPEの使用が中心であった(表3-5-1)。

表 3-5-1 ICT環境の活用状況(頻度)


 

3.ICT教育環境の課題
県立宮古病院での臨地実習の場合、遠隔対話にはPolycom HDXが頻繁に活用された。そこで、4者(教員5人、学部生15人、県立宮古病院看護職者9人、ICT補助者2人(大学側およびサテライト側)の立場から、現行のPolycom HDXを中心としたICT環境に関する振り返り調査を行った(表3-5-2)。

・ICTの利点と欠点
 ICTの利点は、4者共に「移動時間と旅費の節約」に触れ、臨地実習中のみならず、前後の「情報の共有の促進」を指摘していた。また、操作性の分かりやすさと画像や音声の送受信に安定性のあるPolycom HDXではあるが、遠隔会議の実施日によっては音声の遅延、途切れなどのトラブルがみられた。また、発言者が多い遠隔会議でのカメラワークなど、ICT補助者の必要性・重要性が指摘されていた。

・遠隔授業と対面授業の相違
 遠隔授業は、対面授業に比べて、ノンバーバルなコミュニケーション(“間”、“雰囲気”など)に限界があることが共通して指摘されていた。また、教員以外から出た「緊張なく話せる」は意外な指摘であった。

・遠隔授業での創意工夫
 ICT補助者の指摘は、何度も遠隔対話につきあった側からの気づきが多く、遠隔授業のルールに取り入れるべき内容でもあった。一方、利用者の立場である学生等の指摘からはマイクの設置位置に工夫が必要なことがうかがえた。教室内の会話を正確に拾い、雑音・騒音などのノイズをできるだけ拾わないようにするかは、機器の感度・能力にも関連する指摘であった。

・遠隔授業のルール
 遠隔に限らず、授業一般のルールと言える内容、例えば時間厳守、が指摘されていた。ただし、音声が相手側にきちんと届いているかを忘れないこと、遠隔の相手を意識するなどの指摘は重要であった。

・今後の不安材料
 本取組の終了後にICT補助者を置けない場合には、多くの不安は「トラブルシューティング」として表れていた。機器の不調なのか、ネットワークやネットワーク機器の不具合なのか、問題の切り分け(トラブルシューティング)に教員や看護職者が不安感を抱くのはある意味当然である。そこには、機器の操作マニュアル類の整備だけでは不十分な状況がうかがえた。今後、ネットワーク環境に関するFD/SD研修の必要性、教員だけでなく臨地実習の学生にも機器操作に慣れてもらうなど、工夫が必要である。

 

表 3-5-2 ICT環境振り返り調査結果(平成20年度)

 

 

 

 

* 講義(会議)資料等の送受信に関する確認、遠隔システムの準備、教室内環境の整備、遠隔配信時のカメラワークから終了後の後片づけまでを補助する

 

 

 

 

 

 
     
     
     

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